研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 広葉樹リグニンの利用価値を向上させる微生物代謝制御システムを明らかにしました
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2020年12月21日掲載
論文名 |
The Syringate O-Demethylase Gene of Sphingobium sp. Strain SYK-6 Is Regulated by DesX, while Other Vanillate and Syringate Catabolism Genes Are Regulated by DesR(Sphingobium sp. SYK-6株のシリンガ酸O-デメチラーゼ遺伝子は、DesRによって制御される他のバニリン酸およびシリンガ酸分解遺伝子とは異なりDesXによって制御される) |
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著者(所属) |
荒木 拓馬(森林資源化学研究領域)、棚谷 建太・上村 直史(長岡技術科学大学)、大塚 祐一郎・山口 宗義・中村 雅哉(森林資源化学研究領域)、政井 英司(長岡技術科学大学) |
掲載誌 |
Applied and Environmental Microbiology、86(22):e01712-20、November 2020 DOI:10.1128/AEM.01712-20(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
リグニンの化学処理で得られる低分子芳香族化合物 (低分子リグニン)を微生物の代謝機能を利用してポリマー原料等へ変換することは、リグニンの利用価値を高める有望な手段です。低分子リグニン分解微生物としてSphingobium sp. SYK-6株がありますが、これを利用したリグニン変換システムの効率を高めるためには、低分子リグニンの代謝に関わる酵素遺伝子を同定し、それら遺伝子の発現がどのように制御されているかを明らかにする必要があります。広葉樹リグニンを化学処理すると、主要分解産物としてバニリン酸とシリンガ酸が生成します。これまで、SYK-6株のバニリン酸およびシリンガ酸代謝中間体に働く脱メチル酵素遺伝子ligMと、シリンガ酸代謝中間体に作用する芳香環開裂酵素遺伝子desBの転写は、リプレッサー型転写制御タンパク質DesRによって制御されることを明らかにしました(2020年5月26日掲載)。しかし、シリンガ酸の代謝はより複雑で、その代謝制御システムの全容は分かっていませんでした。 本研究では、SYK-6株のシリンガ酸代謝制御システムについてさらなる解析を行いました。その結果、シリンガ酸分解の第一段階に関わるシリンガ酸脱メチル酵素遺伝子desAの制御を行う新たなリプレッサー型転写制御タンパク質DesXを見つけ、DesXが関わる代謝制御システムを明らかにしました。今回の成果は、高効率な広葉樹リグニン変換システムを構築する上で必要となります。
(本研究は2020年11月に Applied and Environmental Microbiology で公表されました。)
図 Sphingobium sp. SYK-6株のシリンガ酸代謝経路とその制御 |
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