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土石流を引き起こす降雨条件は谷底の土砂量に応じて変化する

2021年1月25日掲載

論文名

Variation in rainfall patterns triggering debris flow in the initiation zone of the Ichino-sawa torrent, Ohya landslide, Japan.(静岡県大谷崩一の沢における土石流を誘発する降雨パターンの変化)

著者(所属)

經隆 悠(森林防災研究領域)、堀田 紀文(東京大学)、今泉 文寿(静岡大学)、早川 裕弌(北海道大学)、増井 健志(静岡大学)

掲載誌

Geomorphology、375(15)、107529、February 2021 DOI:10.1016/j.geomorph.2020.107529(外部サイトへリンク)

内容紹介

土石流が発生する降雨条件を明らかにすることは、下流での被害の軽減や早急な避難において重要です。土石流の発生する危険性が高い降雨は、発生域の土砂量に応じて変化すると考えられていましたが、観測結果が乏しく、その実態は明らかになっていませんでした。

本研究では、静岡県大谷崩一の沢流域において、土石流の発生・発達過程のモニタリングを行い、発生時の降雨パターンを分析しました。これにより、谷底の土砂量が多い場合には、強い雨が比較的長い時間継続した場合にのみ、土石流が発生することがわかりました。一方で、土石流によって土砂が侵食されて谷底の土砂量が減少すると、土砂が水で飽和しやすくなるため、その後の土石流はより短時間の強い雨で発生することが明らかになりました。

この結果は、発生域の土砂量の変化をモニタリングすることで、土石流の発生危険降雨の判定を高精度化できることを示唆しており、今後の山間部での土石流対策において有効です。

(本研究はGeomorphology誌にオンライン公表されています。)

 

写真1:土石流発生域の土砂量の変化1 写真2:土石流発生域の土砂量の変化2

写真:土石流発生域の土砂量の変化。土砂は岩盤の風化等で谷底に供給され(左)、その後の土石流の発生・流下によって侵食されます(右:侵食されにくい大きな土砂が取り残されます)。右のような状態では、土砂が水で飽和しやすくなるため、より短時間の強い雨で土石流が発生するようになります。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 森林防災研究領域 經隆 悠
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