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日本産黒トリュフの発生地内における遺伝的多様性

2021年3月15日掲載

論文名

Genotypic diversity of the Asiatic black truffle, Tuber himalayense, collected in spontaneous and highly-productive truffle grounds(アジア産黒トリュフTuber himalayenseの高い生産性をもつ発生地における遺伝的多様性)

著者(所属)

中村 慎崇(きのこ・森林微生物研究領域)、阿部 淳一(筑波大学)、柴田 尚(山梨県森林総合研究所)、木下 晃彦(九州支所)、小長谷 啓介(きのこ・森林微生物研究領域)、ワース ジェームズ(樹木分子遺伝研究領域)、太田 祐子(日本大学)、仲野 翔太(元・きのこ・森林微生物研究領域)、山中 高史(研究ディレクター)

掲載誌

Mycological Progress 19(12)、1511—1523、Springer、2020年12月5日 URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s11557-020-01642-z(外部サイトへリンク)

内容紹介

食用きのこ類は我が国の林業産出額の半分近くを占める重要な林産物です。しかし、マツタケやトリュフなどは現時点で栽培に成功していません。高価なきのこ類の栽培が可能になれば、農山村地域の振興に大きく寄与することができます。

本研究では、国産黒トリュフ(アジアクロセイヨウショウロ)を個体(ジェネット)レベルで識別可能な分子遺伝マーカーを開発し、これを用いて、トリュフ菌がどのように土壌中を拡がり、トリュフを作るかを明らかにしました。その結果、同じ発生地から7年間にわたって採取した黒トリュフは、全て同じ個体に由来していました。一方、交配型を識別する遺伝マーカーを用いると、異なる交配型(動物でいうオス、メス)が存在していました。これらのことは、極めて少数の親に由来するトリュフ菌が土壌中を拡がったのち、交配を繰り返していたことを示しています。

これは、我が国でトリュフの遺伝的多様性や交配型の分布様式を一つの発生地で示した最初の報告です。野外の自然発生環境でのトリュフ菌の遺伝的な特徴は、トリュフ栽培に適した管理手法の開発に重要な知見となります。今回観察された結果は国産黒トリュフに普遍的であるのか、今後は異なる発生地でも調査を進めていきます。

 

(本研究は2020年12月5日にMycological Progressで公表されました。)

 

写真:アジアクロセイヨウショウロ
写真:国産黒トリュフ(アジアクロセイヨウショウロ)

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 山中 高史
【研究担当者】
森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 中村 慎崇
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
【取材等のお問い合わせ】
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