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針葉樹林から発生した流木の長さはドローンによる空撮で精度良く測定できる

2021年5月31日掲載

論文名

Comparison of length and dynamics of wood pieces in streams covered with coniferous and broadleaf forests mapped using orthophotos acquired by an unmanned aerial vehicle. (ドローンを用いた針葉樹林および広葉樹林で発生した流木の長さと移動性の比較)

著者(所属)

經隆 悠(森林防災研究領域)、Mtibaa Slim(森林総研PD)、浅野 志穂・岡本 隆(森林防災研究領域)、黒川 潮(九州支所)

掲載誌

Progress in Earth and Planetary Science、 8、22、March 2021 DOI:10.1186/s40645-021-00419-6(外部サイトへリンク)

内容紹介

上流の山地斜面の崩壊により発生した流木は、下流域で深刻な被害を引き起こす危険があります。治山施設や渓畔の立木等によって渓流内で捕捉された流木の長さは、災害発生時に流下した流木の特徴を推定する上で重要な情報です。しかし、大量の流木が広範囲に捕捉されることがあるため、全ての流木を人力で直接測定することは困難です。そのため、ドローンを使って広域に堆積した流木の長さを測定する手法の確立が期待されていますが、まだ現地データが不足しているため、測定精度を十分には検証出来ていませんでした。

本研究では、平成29年九州北部豪雨によって主に針葉樹林から流木が発生した流域と、平成30年7月豪雨によって主に広葉樹林から流木が発生した流域において、小型のドローンで撮影した画像から流木の長さを測定し、実際に現地で測定した値と比較しました。その結果、針葉樹林で発生した流木の長さを、ドローンを使って誤差0.5m程度の高い精度で測定できることを明らかにしました。一方で、広葉樹林で発生した流木のドローン画像を用いた測定値は、樹冠部や根系部が複雑な形状をしているため、実際に現地で計った長さに比べて小さくなる傾向にあることが分かりました。

この結果は、ドローンによる流木の測定手法が特に針葉樹林で有効であることを示しており、今後の流木災害後の速やかで安全な現地調査に貢献します。

 

(本研究は、2021年3月 Progress in Earth and Planetary Scienceにおいてオンライン公表されました。)

 

写真:捕捉された流木の実測の様子
写真:捕捉された流木の実測の様子。渓流内に大量の流木が捕捉される場合がありますが、災害後に広域で各流木を測定するためには、今までは多くの時間と労力が必要でした。本研究による成果は、流木の実測に代わるより安全で容易な手法を提案するものです。

 

図:ドローンによる空撮結果

図:ドローンによる空撮結果。ドローンによる空撮で得た空中写真は解像度が高く(左)、各流木を手動で判読し長さを測定することができます(右)。

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森林総合研究所 研究ディレクター 玉井 幸治
【研究担当者】
森林総合研究所 森林防災研究領域 經隆 悠
【広報担当者】
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