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間柱を使った大断面集成材の開発と強度検証

2021年5月31日掲載

論文名

間柱サイズ材を用いた大断面集成材の開発(その1) 製造と材料性能

著者(所属)

井道 裕史・長尾 博文・原田 真樹(構造利用研究領域)、宮武 敦(複合材料研究領域)、野田 康信(構造利用研究領域)、吉田 傑(ティンバラム株式会社)、清水 邦夫(日本集成材工業協同組合)

掲載誌

木材工業、76巻4号、129-134、日本木材加工技術協会、2021年4月

内容紹介

集成材は一般的にラミナ(板状の木材)を厚さ方向に積層接着(各層のラミナを積み重ねて接着すること)した木質材料ですが、大規模な木造建築物には一般の住宅よりも断面の大きい大断面集成材が使われます。しかし、大断面集成材に必要な幅広のラミナは一般的に流通していないこともあり、大断面集成材の生産性はあまり高くありませんでした。

そこで、国内で比較的入手しやすいスギ間柱(柱と柱の間に配置する柱よりも断面の小さい部材)をラミナに使い、製造方法を工夫して大断面集成材を製造することを考えました。通常の間柱の幅105mm程度ですと大断面集成材にするには幅が足りないので、写真のように間柱を幅はぎ(幅方向に接着すること)した集成材(1)と、幅はぎせずに間柱を重ねた集成材(2)の2種類のタイプを考え、大断面集成材を開発しました。また、ともに積層接着には、従来用いられてきたレゾルシノール樹脂接着剤ではなく、短時間で硬化し、より安価な水性高分子イソシアネート系樹脂接着剤を用いました。

両集成材について様々な種類の強度試験を行いました。その結果すべての試験体で、国土交通省が規定する基準強度(設計時に用いる強度の基準)の値を上回り、製造した大断面集成材は建築用部材として強度的に安全に使用できることが確認できました。

この結果から、国産材を用いた大断面集成材の生産性が高まるとともにコストが下がり、需要が拡大することが期待されます。

 

(本研究は2021年4月木材工業において公表されました。)

 

写真:製造した大断面集成材
写真:製造した大断面集成材。集成材(1)は幅はぎをしたのに対して、集成材(2)は幅はぎをしていません。また、集成材(1)と集成材(2)とではラミナを配置する方向が異なります。

 

図:強度試験の結果

図:強度試験の結果(左:集成材(1)、右:集成材(2))。いずれの種類の強度試験においても、すべての試験体で基準強度を上回ることが確認できました。

 

本研究は、農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受けて実施しました。

写真・図は、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所発行、構造用集成材の低コスト化技術〜川下から川上まで〜、中長期計画成果番号:第4期 中長期計画39(木材利用技術-4)、ISBN:978-4-909941-19-0を一部改変したものです。

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【研究担当者】
森林総合研究所 構造利用研究領域 井道 裕史
【広報担当者】
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