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北へ分布拡大するブナ林の遺伝的多様性の変遷

2021年6月23日掲載

論文名

Recovery process of genetic diversity through seed and pollen immigration at the northernmost leading-edge population of Fagus crenata (ブナ最北限における種子と花粉の移入による遺伝的多様性回復過程)

著者(所属)

北村 系子、中西 敦史(北海道支所)

掲載誌

Plant Species Biology、種生物学会、2021年5月 DOI:10.1111/1442-1984.12332(外部サイトへリンク)

内容紹介

ブナは約6000年前に渡島半島の南端から北進して約1000年前に北限の黒松内町に到達したと考えられています。そんな中、最近、北限とされていた場所からさらに10km以上北に150本ほどのブナの小集団が発見され、ブナは今もなお分布を拡大していることがわかりました。しかし、集団が存続するためには遺伝的多様性が不可欠です。そこで、この北進最前線のブナ林の遺伝的多様性の過去の変化を調べました。

この集団で最高齢のブナは今から100年以上前に定着したもので、その遺伝的多様性はとても低いことがわかりました。これらは、南のブナ林から鳥や小動物によって運ばれたごく少数の種子に由来すると考えられます。一方、それより後に定着した若いブナは、高い遺伝的多様性を示しました。これらは、先行したブナが大きくなって花をつけ、遠くから飛んでくる花粉を受けて作られた種子や南のブナ林から新たに運ばれた種子に由来すると考えられます。

それに比べて、現在作られている種子や芽生えの遺伝的多様性はあまり増加していませんでした。これは、成熟したブナが増え、また大きくなって1本にたくさんの花がつくようになり、集団内での花粉のやり取りが増え、その結果、外から新しい遺伝子が入ってきにくくなったためと考えられます。

このように、北進最前線のブナ林の遺伝的多様性の変遷は複雑なものでした。このブナ林の今後の推移を注意深く調査していく必要があります。

(本研究は、Plant Species Biologyにおいて2021年5月にオンライン公表されました。)

 

写真:調査地の様子

写真:調査地の様子。この写真の右端の木が調査したブナのうちの1本

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