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民間のREDDプラスの成果を国の成果の一部として適切に位置づけるための手法を開発

2021年6月23日掲載

論文名

Allocating the REDD+ national baseline to local projects: a case study of Cambodia (REDDプラスにおける国の森林参照レベルのプロジェクトへの配分:カンボジアの事例)

著者(所属)

江原 誠(生物多様性・気候変動研究拠点)、齋藤 英樹(森林管理研究領域)、道中 哲也(生物多様性・気候変動研究拠点)、平田 泰雅(研究ディレクター)、LENG Chivin(カンボジア環境省)、松本 光朗(近畿大学)、RIANO Carlos(国連開発計画)

掲載誌

Forest Policy and Economics、129、2021年5月 DOI:10.1016/j.forpol.2021.102474(外部サイトへリンク)

内容紹介

REDDプラスは、途上国での森林減少・森林劣化の抑制等による気候変動の緩和効果に対して、経済的インセンティブを与えるメカニズムです。民間のREDDプラスプロジェクトを推進するため、プロジェクト活動による温室効果ガスの排出削減成果を、国全体の成果の一部として適切に位置づけるための手法が求められています。

本研究では、民間によるREDDプラスプロジェクトが開始されたカンボジアを対象に、プロジェクトの活動の成果を国の成果と整合性を保った上で評価する手法を開発しました。具体的には、国の森林参照レベル注)を、プロジェクトエリアの森林面積、森林炭素蓄積量、プロジェクトエリア内および周辺のこれまでの森林減少の傾向とその要因といった立地条件の違いを考慮して、プロジェクトに配分する手法です。

この手法は、カンボジアでのREDDプラスの評価システム設計に活用されており、REDDプラスを実施する他の国においても適用可能です。

注)国の森林参照レベル:REDDプラスを実施しなかった場合の全国の森林減少・劣化の進行度合を予測し、これを温室効果ガス排出量(tCO2/年)に換算したもの。国のREDDプラスの成果は、この国の森林参照レベルをREDDプラス実施後の排出量(tCO2/年)と比較することにより評価されます。

(本研究は、2021年5月にForest Policy and Economicsでオンライン公表されました。)

 

図1:開発した手法を用いた結果と独自設定との比較

図1:開発した手法を用いてカンボジアの国の森林参照レベルを(1)~(4)の4変数に応じてプロジェクトA~Eに配分した結果とプロジェクトが独自に設定した森林参照レベルとの比較
(記載論文の図を一部改変して使用した)
用いる変数によって、プロジェクトに配分される森林参照レベルは大きく異なる場合があります。一般的に国の森林参照レベルは、過去の森林減少・劣化の傾向を参考に設定されます。この考え方と最も辻褄が合う配分手法は(4)の変数を用いた手法ですが、データ収集・解析に比較的コストがかかる手法となります。一方、(1)または(2)の変数を用いる手法は、これらのコストは低くなりますが、データ収集時点で森林面積が広大な、または炭素蓄積の豊富な森林地帯の保全に成功したプロジェクトに有利な手法となります。

 

写真:カンボジアの森林減少

写真:カンボジアの森林減少

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