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スギ不定胚の効率的な生産法を開発しました

2021年7月7日掲載

論文名

Factors Influencing Somatic Embryo Maturation in Sugi (Japanese Cedar, Cryptomeria japonica (Thunb. ex L.f.) D.Don)(スギ不定胚の成熟に影響を与える要因)

著者(所属)

丸山 E.毅・上野 真義・森 英樹(樹木分子遺伝研究領域)、金枝 拓実・森口 喜成(新潟大学)

掲載誌

Plants 2021、10、1074、2021年4月 DOI:10.3390/plants10050874(外部サイトへリンク)

内容紹介

クローン増殖技術はバイオテクノロジーに欠かせないツールです。現在利用可能な技術の中では、不定胚(注)からクローンを増殖する方法が最も優れています。しかし多くの樹種では、樹木の体細胞から不定胚を効率的に形成させることが大変困難です。したがって、不定胚の形成効率を高めることが樹木のクローン増殖技術を確立するために極めて重要です。

そこで、重要な林業樹種であるスギにおいて、不定胚の形成に影響を与える培養条件を検討しました。その結果、マルトース、アブシシン酸、ポリエチレングリコール、活性炭やアミノ酸を添加した培地上で、植物の体細胞のうち分化全能性が高く不定胚を形成しやすい細胞(不定胚形成細胞といいます)を培養することにより、生重量1グラムから1000個以上の不定胚を生産できるようになりました(図)。開発したこの培地による不定胚生産法は、樹木のクローンの実用的な大量増殖だけでなく、細胞生物学や分子遺伝学の研究に必要不可欠な実験系としても利用できます。

 

(注) 不定胚:受精によらずに植物の体細胞から生じる組織で、種子胚と類似の形と能力を備えています。

(本研究は、2021年4月にPlants 2021においてオンライン公表されました。)

 

図:スギの不定胚の形成

図:スギの不定胚の形成。
(A)適切な時期に収穫した種子をオーキシンとサイトカイニンを含む培地上で培養することによって得られた不定胚形成細胞
(B)開発した不定胚形成用培地上で不定胚形成細胞を培養することにより形成された不定胚。
スケールバー:5mm

予算区分

生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」(28013B、28013BC)

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【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 正木 隆
【研究担当者】
森林総合研究所 樹木分子遺伝研究領域 丸山 毅
【広報担当者】
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