研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > 土の中のセミの幼虫に取り憑いて大量のキノコが生えてきた
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2021年9月8日掲載
論文名 |
隔離分布地において地中の寄主幼虫に壊滅的な死亡をひきおこしたツクツクボウシタケ(子嚢菌門:ボタンタケ目)の大量発生 |
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著者(所属) |
磯野 昌弘(東北支所) |
掲載誌 |
日本応用動物昆虫学会誌、65巻3号、133-141、日本応用動物昆虫学会、2021年8月 DOI:10.1303/jjaez.2021.133(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
冬虫夏草類は、昆虫に特異的に感染して死亡させ、そこからきのこを発生させる菌類です。この仲間の菌の感染は、昆虫の数を左右する要因の一つと考えられていますが、その生態や天敵としての働きに関する知見は、ブナアオシャチホコとサナギタケの例など一部の種に限られていました。 そんな中、2016年にセミの幼虫に感染するツクツクボウシタケが大量に発生しているのを岩手県盛岡市の近郊にて発見しました。発生場所は17m×23mの広さのトネリコの林です。土を掘り返すと、それらはツクツクボウシの終齢幼虫から発生していました。2016年、2017年、2020年のそれぞれ8月上旬に調べたところ、このきのこは1m2あたり幼虫8.9頭(林分全体で推定約3450頭)、4.6頭(同1780頭)、1.4頭(560頭)から発生していました。そして、どの年も、感染を免れて地上に這い出してきたツクツクボウシの幼虫は林全体で2~6頭とごく僅かでした。一方、同じ林に生息するアブラゼミやヒグラシの幼虫からはこのきのこは発生していませんでした。以上のことから、このきのこによる病気は、羽化まで4~5年を要するツクツクボウシ幼虫の死因の大きな割合を占めていると考えられます。今回の発見は、都市近郊の林でも冬虫夏草類が特定の生物に対して天敵として働いていることを示すものです。
(本研究は、2021年8月に日本応用動物昆虫学会誌において公表されました。)
地上に出現したツクツクボウシタケ(写真左)と土から掘り出したツクツクボウシの死亡幼虫(写真右)。 |
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