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2021年10月18日掲載
論文名 |
ソーダ・アントラキノン蒸解スギパルプより酵素処理と湿式解砕で調製したセルロースナノファイバーの安全性評価試験 |
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著者(所属) |
下川 知子・眞柄 謙吾・野尻 昌信・林 徳子(森林資源化学研究領域) |
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掲載誌 |
紙パルプ技術協会誌、75巻8号、757-773、紙パルプ技術協会、2021年8月 |
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内容紹介 |
スギを原材料として、産業への応用が可能となるセルロースナノファイバー(CNF)を製造するための一貫製造プロセス(ソーダ・アントラキノン蒸解後に漂白したパルプより酵素処理と湿式解砕で調製)の開発を行い、得られたCNFの安全性を確認するため、変異原性や皮膚への接触刺激性などに関する各種の試験を行いました。 CNFは木質資源から得られる軽くて丈夫な極細の繊維です。樹脂等へ少量添加することで、複合化された素材の物性が変化します。この性質を利用してCNFの産業利用が始まっています。例として、CNFの配合により、耐候性の向上した木材用塗料が開発されています。 CNFの原料として、まとまった量の入手が困難な地域材を想定したことから、中小規模での調整が可能なバッチ式での製造方法を採用しました。バッチ式では大型工場での製造と比較して、作業者がCNF懸濁液に直接触れる機会が多くなると考えられます。CNFは未だ安全性に関する情報が乏しかったことから、安全性に関する5種類の試験を実施し、一貫製造プロセスによってスギから調製したCNFは、通常の取り扱いの範囲において安全性に問題がないことを確認しました。 豊かな森林資源を今まで以上に各種製品の素材として使用する研究開発が進んでいます。その際、天然物由来であっても取り扱う素材の安全性に関する情報は重要です。CNFの安全性に関する情報の蓄積は、幅広い産業分野におけるCNFのさらなる展開を支えるものです。
(本研究は、2021年8月に紙パルプ技術協会誌において公表されました。)
図:スギからのセルロースナノファイバーを製造するための一貫製造プロセスと安全性評価。 |
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