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2021年11月19日掲載
論文名 |
Effects of forest conversion to rubber plantation and of replanting rubber trees on soil organic carbon pools in a tropical moist climate zone(熱帯湿潤地域において森林のゴム林転換および再植林が土壌有機炭素プールに与える影響) |
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著者(所属) |
鳥山 淳平(九州支所)、今矢 明宏・平井 敬三(立地環境研究領域)、LIM Khan Tiva(カンボジアゴム研究所)、HAK Mao(カンボジア環境省)、清野 嘉之(元森林総合研究所) |
掲載誌 |
Agriculture、Ecosystems and Environment、323、107699、2022年1月 DOI:10.1016/j.agee.2021.107699(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
熱帯地域でみられるゴムノキは、自動車タイヤ等の材料である天然ゴムを生産するための重要な生物資源です。一方で、森林を伐採しゴムノキのプランテーション(以下、ゴム林)を造成する過程で、森林が土壌にため込んだ炭素(以下、土壌炭素)が二酸化炭素として大気中に放出される可能性が指摘されています。さらに近年東南アジアでは、20年以上経過した古いゴム林を伐採し、新しい世代へ植え替えることも行われていますが、ゴム林の植え替えが土壌炭素の動態に与える影響についてはこれまで明らかになっていません。 このため私たちは東南アジアのカンボジアにおいて、森林とゴム林(第一および第二世代)の土壌調査を行い、一連の土地利用の変化が土壌炭素の貯留量に与える影響を調べました。その結果、新たにゴム林を造成すると森林の伐採から10年以内に土壌炭素(注)の1/3程度が大気中に放出されるのに対し、古くなったゴム林の植え替えを行っても、土壌炭素の貯留量は長期的に見て減少しないことを明らかにしました。 本研究の結果により、新たなゴム林の造成を抑え、古いゴム林の植え替えを優先的に行うことで、天然ゴムの生産と地域の雇用を維持しつつ、土壌由来の二酸化炭素の放出を抑えることができることを明らかにしました。この成果は、熱帯地域でのゴム林造成のための森林開発を抑制するための重要な知見となります。 (注)深さ0-30cmの範囲を対象としています。
(本研究は、2021年10月にAgriculture, Ecosystems and Environmentにおいてオンライン公開されました。)
写真:左、ゴム林の様子。樹皮に斜めの傷をつけて樹液を回収する。
図:土地利用の変化に伴う土壌炭素貯留量の変化 |
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