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世界自然遺産・やんばるの森ではうろうろせずともウロがある

2021年12月2日掲載

論文名

Tree-cavity formation in the mature subtropical forests of Yambaru, Okinawa Island.(沖縄島やんばる地域の成熟した亜熱帯林における樹洞の形成)

著者(所属)

高嶋 敦史・中西 晃・森下 美菜(琉球大学)、阿部 真(多摩森林科学園)、齋藤 和彦(関西支所)、小高 信彦(九州支所)

掲載誌

Journal of Forest Research、2021年9月 DOI:10.1080/13416979.2021.1955440(外部サイトへリンク)

内容紹介

沖縄島北部のやんばるの森は、多くの固有種を含む高い生物多様性の価値が認められて2021年7月に登録が決定した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産」の一部です。この森では、ネズミと甲虫のそれぞれ日本最大種であるケナガネズミとヤンバルテナガコガネなど、固有の希少動物を含む多くの生物が木の幹にできる樹洞(ウロ)を利用します。そこで、本研究はやんばるの森で10cm以上の深さを持つ樹洞の発生状況を調査し、その確保に必要な要素を明らかにしました。

過去に皆伐された記録のない森で調べた結果、樹洞の密度はヘクタールあたり198個で、世界的にも樹洞の多い森であることがわかりました。樹種では、スダジイ(沖縄ではイタジイと呼ばれます)とイスノキに樹洞が多く、いずれも大径木(胸高直径が大きい幹)ほど保有率が高くなりました。特にイスノキは、比較的細い段階から保有率が高く、大径木の多くには複数の樹洞がありました。樹洞の形成要因の大半は自然な腐朽でした。

一方、調査した中でケナガネズミによる利用が確認された樹洞は、容積が約0.1m3以上の比較的大きな2つのみでした。これは、この森ではかなり多くの樹洞が供給されることで、希少動物が生きていける環境が潜在的にもたらされていることを意味します。この環境を持続させるためには、大径木を減らさないことが大切で、特に樹洞を複数持ちやすいイスノキの大径木は保全状態の指標として重要です。

(本研究は、2021年9月にJournal of Forest Researchにおいてオンライン公表されました。)

 

写真:ケナガネズミによる利用が確認されたイスノキの樹洞

写真:ケナガネズミによる利用が確認されたイスノキの樹洞。この樹洞の容積は約0.1m3でした。

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