研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > ツリーシェルターは植栽苗の生育成績を改善するが、さらなる広範な研究が必要
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2021年12月2日掲載
論文名 |
Effects of treeshelters on seedling performance: a meta-analysis.(ツリーシェルターが苗の成績に与える効果のメタ解析) |
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著者(所属) |
安部 哲人(九州支所) |
掲載誌 |
Journal of Forest Research、27(2)、in press、2021年11月 DOI:10.1080/13416979.2021.1992700(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
ツリーシェルターは苗を1本ずつ囲う資材(写真参照)で、動物による食害防止効果や成長促進効果があるとされていますが、林業の現場では効果的な場合もあれば、そうでない場合もあります。そこで、ツリーシェルターを研究した世界中の文献から苗の死亡率、食害率、樹高成長、直径成長のデータを使い、ツリーシェルターの苗に対する効果の程度を調べました。その結果、ツリーシェルターを用いると死亡率、食害率が低下し、樹高成長は促進されるという改善効果が概ね認められました。ただし、条件によっては結果が変わることがあり、例えば、苗を針葉樹に限定するとツリーシェルターが死亡率を下げる効果はありませんでした。このように樹種やツリーシェルターのタイプ等の条件によっては、期待した効果を発揮しない場合があることがわかりました。また、良い効果の研究事例(例えば、樹高ならより大きく成長している)が報告されやすいことがわかりました。このことは、ツリーシェルターによる苗への効果が過大評価されている可能性を示します。ツリーシェルターの研究事例は、ナラ属の樹種や温帯域での研究が多い、といったように特定の条件に研究事例が集中しており、それ以外の条件では研究が不足しています。日本では針葉樹を使った林業の現場で失敗事例も見られますが、ツリーシェルターの効果を正しく発揮させるためには、これまで以上に多くの条件で研究を進めていくことが大切です。
(本研究は、2021年11月にJournal of Forest Researchにおいてオンライン公表されました。)
写真:プラスチック製のツリーシェルター |
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