研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > マングローブ林の枯死した根は沿岸生態系の炭素貯留に貢献する
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2021年12月24日掲載
論文名 |
Estimation of total fine root production using continuous inflow methods in tropical mangrove forest on Pohnpei Island, Micronesia: fine root necromass accumulation is a substantial contributor to blue carbon stocks.(Continuous inflow estimate法によるミクロネシア連邦ポンペイ島マングローブ林における全細根生産速度の試算:細根ネクロマスの蓄積がブルーカーボン貯留に大きく貢献している) |
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著者(所属) |
小野 賢二(立地環境研究領域)、藤本 潔(南山大学)、平田 泰雅(研究ディレクター)、田淵 隆一(元森林総研)、谷口 真吾(琉球大学)、古川 恵太(海辺つくり研究会)、渡辺 信(琉球大学)、諏訪 錬平(国際農林水産業研究センター)、Saimon Lihpai(ミクロネシア連邦ポンペイ州政府) |
掲載誌 |
Ecological Research、日本生態学会、2021年12月 DOI:10.1111/1440-1703.12280(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
河口部や海岸、さらにその前面に位置する磯など沿岸部の生態系で、植物や土壌に固定・貯留されたCO2由来の炭素をブルーカーボンと言います。その沿岸生態系を構成するマングローブ林(写真1)は、生産力が大きく、高い炭素貯留能を持っています。中でも、特にマングローブの細根の生産力は高く、マングローブピート(泥炭)の材料となります。しかし、これまではマングローブの枯死した細根の分解過程が見逃されてきたため、細根全体の生産量が過小に評価されてきました。 そこで、本研究では、発生・枯死・分解の全て過程を通じた細根の全生産量をミクロネシア連邦のマングローブ林で調査しました。その結果、マングローブ林の深さ30cmまでの年間細根生産量は13.8~56.3トンha-1で、これはこれまで調べられた値よりも大きく、さらに他の森林生態系と比べても格段に大きいことが分かりました(図)。また、細根の年間枯死量と分解量は、それぞれ、生産量の70~105%、11~52%を占めていました。 このことから、マングローブ細根の枯死・蓄積がマングローブ生態系だけでなく、沿岸生態系の炭素貯留に大きな役割を果たしており、今後の気候変動緩和策を考える上で、マングローブ林を含む沿岸生態系を適正に保全・管理することが重要であるといえます。
(本研究は、2021年12月にEcological Researchにおいてオンライン公開されました。)
写真1:沿岸生態系を構成するマングローブ林
写真2:マングローブピート(泥炭)の材料となる、根密度の高いマングローブのマット状の細根(ミクロネシア連邦ポンペイ州マドレニウム村のヤエヤマヒルギ林)
図:マングローブ林の年間細根生産量(Mg ha-1 年-1 土壌深30cm-1)とマングローブ以外の森林生態系の年間細根生産量(Mg ha-1 年-1) a: Cormier et al. 2015, Gleason and Ewel 2002, b: Noguchi et al. 2020, Poungparn et al. 2016, c: Castaneda 2010, Castańeda-Moya et al.2011, Sanchez 2005, d: Cahoon et al. 2003, e: McKee et al. 2007, f: Fińer et al. 2007 |
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