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ビッグデータからスギ林の将来の生産性を高精度で予測

2022年3月23日掲載

論文名

Assessing the regional-scale distribution of height growth of Cryptomeria japonica stands using airborne LiDAR, forest GIS database and machine learning (航空機LiDAR、森林GIS、機械学習モデルを用いた地域スケールにおけるスギ人工林の樹高成長の評価)

著者(所属)

中尾 勝洋(関西支所)、壁谷 大介(植物生態研究領域)、粟屋 善雄(岐阜大学)、山﨑 真(高知県)、津山 幾太郎(北海道支所)、山川 博美(九州支所)、宮本 和樹(森林植生研究領域)、荒木 眞岳(植物生態研究領域)

掲載誌

Forest Ecology and Management Volume 506 2022年2月 DOI:10.1016/j.foreco.2021.119953(外部サイトへリンク)

内容紹介

気候変動が木材生産に及ぼす影響が懸念されています。一方、生産性に配慮した森林管理を行うことで、気候変動が木材生産に及ぼす影響を軽減できる可能性が示唆されており、それぞれの森林の生産性を評価することの重要性が増しています。

本研究では、航空機LiDAR、森林GIS(林齢等)、環境情報(気候や地形等)からなる岐阜県郡上市(写真)と高知県香美市のビッグデータを活用し、生産性の指標となるスギ人工林の樹冠高成長について機械学習モデルを用いて高解像度(25m解像度のグリッド)で予測する手法を検討しました。その結果、スギ樹冠高成長が林齢、気候、地形などの要因から高い精度で定量的に推定できることを明らかにしました。さらに、構築したモデルにより20から100年次における樹冠高を予測し、両地域内のグリッドを4つの成長タイプ(高成長、晩熟、早熟、普通)(図1)に区分したところ、郡上市では気候条件、香美市では地形条件にそれぞれ応じて空間的に分布しており、気候条件に対するスギ成長の応答が地域間で異なる場合があることも明らかになりました。

このように、対象となる地域内のスギ成長についてビッグデータを用いて定量的かつ空間的に評価し、将来の生産性を考慮した最適な森林管理を可能とする本研究の成果は、気候変動下における適切な森林管理や森林資源の持続的な利用につながるものです。(図2)

(本研究は、2022年2月にForest Ecology and Managementでオンライン公開されました。)

 

写真:郡上市のスギ人工林
写真:郡上市のスギ人工林
郡上市は、森林面積が広く林業の盛んな地域であり、地域内でもスギ成長が良い場所が経験的には知られていました。本研究では、ビッグデータを活用し、この点を定量的に評価しました。

 

図1:成長タイプの類型化
図1:成長タイプの類型化
本研究で開発したモデルを用いて、両地域内のグリッドでの20から100年次における樹冠高を予測し、40年次と80年次の予測値に基づいて4つの成長タイプ(高成長、晩熟、早熟、普通)に区分しました。例えば、高成長タイプは全期間を通じて成長の良い場所、晩熟は生育期間の後半で成長の良い場所であることを示しています。

 

図2:郡上市における50年次のスギ樹冠高の予測結果
図2:郡上市における50年次のスギ樹冠高の予測結果
本研究で開発したモデルを用いて、植栽後50年次に想定されるスギ林冠高を予測した結果。

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