研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > 熱帯林をアブラヤシ農園に転換すると温室効果ガスN2Oの放出量が増加する
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掲載日:2022年6月13日
近年、インドネシアやマレーシア等の熱帯アジアを中心にアブラヤシ農園が急速に広がっています。これらのアブラヤシ農園で生産されるパーム油は、食品や洗剤など私たちの生活の身の回りの製品としても多く利用されています。その一方で、アブラヤシの大規模農園を作るために多くの熱帯林が伐採されており、生物多様性の消失や森林に蓄えられる炭素量の減少等の問題も生じています。
これらの問題に加えて、アブラヤシ農園では多くの窒素肥料を施用するため、主要な温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)の土壌からの放出量が増加すると考えられています。これは、N2Oが土壌中の微生物によって、施肥された窒素を原料として生産されているためです。
本研究では、これまで出版された全ての文献データを収集し、統合解析を行うことによって、熱帯林からアブラヤシ農園への転換がN2O放出量に及ぼす影響を調査しました。長期間(1年以上)かつ高頻度(隔月1回以上)に収集されたデータ(すなわちより信頼性の高いデータ)のみを用いた解析と、それ以外のデータを全て含んだ解析の2種類を行った結果、いずれの解析においても熱帯林からアブラヤシ農園への転換によってN2O放出量が増加することがわかりました(図1)。この結果は、土地利用形態の変化が地球温暖化に及ぼす影響を予測するために有効です。
(本研究は、2022年6月にJournal of forestry researchにおいてオンライン公開されました。)
図1 熱帯林とアブラヤシ農園から放出される亜酸化窒素(N2O)量の比較。
(a)全てのデータを用いた解析と(b)長期高頻度モニタリングデータのみを用いた解析いずれにおいてもアブラヤシ農園からのN2O放出量が対照区である熱帯林と比較して有意に高かった。解析は混合モデルによって行った。
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