研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2023年紹介分 > 茨城・栃木の低山に分布するブナは最終氷期から「定住」か
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掲載日:2023年3月24日
茨城・栃木両県の標高400m以下の低山に分布する落葉広葉樹ブナの集団は、最終氷期(7万年前~1万年前)から同じ場所に存続してきたと考えられることが葉緑体の遺伝子型分析で分かりました。
樹木集団の中には、本来の分布域よりも温暖な側に生育するものがみられます。その集団が氷河期からの生き残りであれば特有の遺伝子を持っている場合が多く、保全価値が高いと考えられます。しかし一方で、それらは氷河期以降に他の地域から急速に分布を拡大して移住してきたもので、遺伝的には特徴がない可能性もあります。
茨城・栃木の県境付近には孤立したブナ集団が点在し、その中には本来の分布域である冷温帯より下部の暖温帯の低山(高さ400m以下)に分布するものもあります。茨城・栃木の県境付近にて低山の7集団を含む18個の集団を対象に295個体の塩基配列を分析した結果、低山の5集団には固有の遺伝子型が存在することが分かりました。これらのブナの集団は最終氷期以降に他の地域から移住してきたのではなく、同じ地点で「定住」してきたと考えられ、保全価値が高いブナ集団と言えます。
(本研究成果は、2022年12月にEcological Researchでオンライン公開されました。)
調査地点の低山のひとつである御前山(標高156m)のブナ林
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