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有望なバイオマス資源ヤナギ、豚ぷん堆肥で急成長

掲載日:2023年7月6日

資源作物として有望視されるヤナギのうち、関東に分布する7種類のヤナギの栽培試験を2年間行い、安価な市販の豚ぷん堆肥を施用することで、その成長が大きく促進されることを明らかにしました。豚ぷん堆肥の施用量は、花卉栽培のマニュアルに記載された1haあたり年間20t(堆肥区)と、その倍の40t(2倍堆肥区)とし、無施肥の対照区も設定し試験を行いました(写真)。試験地の土壌は養分が乏しく、無施肥ではヤナギの成長は抑制されました。しかし、豚ぷん堆肥の施用で成長が促進され、2倍堆肥区のオノエヤナギとタチヤナギの年間乾重量はそれぞれ14.1と13.7t/haを示し、ヤナギの栽培実績のある欧州での目標である10t/年を大きく上回りました(図)。

これまでのヤナギの栽培は、日本北部に分布するエゾノキヌヤナギとオノエヤナギを用いて実施された研究例が多く、それより南側に分布するヤナギについては栽培例が極めて限られていました。また、肥料を大量に施用した場合、どのくらいヤナギの成長が促進されるかも不明でした。

さらに、ヤナギの葉に含まれる養分を分析し、樹高成長との相関からどの養分が成長に関わるか検証しました。その結果、最も成長促進に効果がある養分は樹種間で異なり、窒素・リン・カルシウム・マグネシウムが関わっていました。豚ぷん堆肥には各種養分が高濃度に含まれ、ヤナギ全般に成長促進効果があることが分かりました。

本研究は、Forestにおいて2023年3月にオンライン公開されました。)

写真1:実験終了時のコゴメヤナギ
写真1:実験終了時(2020年11月)のコゴメヤナギ
左から対照区(無施肥)、堆肥区、2倍堆肥区。左端の白線は1mを示す。

図1:ヤナギ7樹種の1haあたりの地上部の年間乾重量

図1:ヤナギ7樹種の1haあたりの地上部の年間乾重量。
Aが対照区、Bが堆肥区、Cが2倍堆肥区。森林総合研究所苗畑(茨城県つくば市)で2019年~2020年に実施。イヌコリヤナギとタチヤナギは2020年~2021年に実施。

 

  • 論文名
    Growth characteristics of seven willow species distributed in eastern Japan in response to compost application(東日本に分布するヤナギ7種における堆肥添加による成長特性)
  • 著者名(所属)
    香山 雅純(植物生態研究領域)、菊地 賢(北海道支所)、上村 章(植物生態研究領域)、高橋 正義(森林災害・被害研究拠点)
  • 掲載誌
    Forests、14(3)、606、2023年3月 DOI:10.3390/f14030606(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 久保 智史
  • 研究担当者
    植物生態研究領域 香山 雅純

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