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育苗中に成長が良く幹が太くなったカラマツ苗木、植栽後もすくすく

掲載日:2023年7月10日

日本の主要な造林樹種のひとつであるカラマツは、育苗時に成長が良好で幹が太くなった苗木ほど、植栽後に樹高がよく伸び、より早く雑草木の高さを超えることが分かりました。カラマツの育苗技術の向上や再造林コストの削減に役立つ成果で、幹の成長に関与する育苗密度の適切な管理や高品質な種子の使用が高成長苗木の生産に重要であることが示唆されました。

山出し後の苗木の成長は植栽地の微環境に影響され大きくばらつくため、どのような特徴を持つ苗木がよく成長して雑草木の高さを早く超えるのか、これまで十分に理解されていませんでした。そこで、苗高や幹の太さ、苗齢(1〜3年生)、育成法(裸苗*1・コンテナ苗*2)などの特徴が異なる7種類のカラマツ苗木(写真)を北海道下川町の約2ヘクタールの造林地に植栽し、3年後の樹高に影響する特徴を統計モデルにより解析しました。

その結果、植栽3年後の樹高に最も影響する特徴は苗木の高さではなく幹の太さで、植栽時の根元径が7.3mm以上あれば75%の確率で3年後には雑草木の高さである2m以上に成長することがわかりました。一方、根元径が7.3mm未満でかつ高さが34cm未満の背の低い苗木や、高さが34cm以上でも通常より1年長く育成した3年生の苗木では、3年後の樹高が2m以上になる確率は8%以下となり、雑草木の高さを超えるには4年以上かかることがわかりました(図)。

*1 裸苗:苗畑で生産される従来の苗木。畑から掘り出して出荷され、根がむき出しの状態で植栽される。

*2 コンテナ苗:底面が空き根巻き防止機能を有した樹脂性容器の中で、専用の培土を使って生産される苗木。近年、生産量が増えている。根が培土に包まれた状態で植栽されるため、裸苗に比べて植栽効率が高く、植栽後の乾燥ストレスに強いのが特徴。容器の制限により出荷される苗木は小型である場合が多い。

本研究は、Forestにおいて2023年4月にオンライン公開されました。)

写真:植栽試験に用いた7種類のカラマツ苗木
写真:植栽試験に用いた7種類のカラマツ苗木(左2つ:裸苗、右5つ:コンテナ苗)
 

図:植栽苗木の大きさ・苗齢

図:植栽苗木の大きさ・苗齢
植栽時の苗の特徴と植栽3年後の平均樹高(エラーバーは標準誤差、グレーの小点は各植栽苗の実測値)。
論文データを元に作成した。

 

  • 論文名
    Effects of seedling size, stock type, and mechanical site preparation method on initial survival and growth of Japanese larch (Larix kaempferi) seedlings (日本カラマツ植栽苗の活着、初期成長に対する苗木サイズ、苗種、機械地拵え法の影響)
  • 著者名(所属)
    原山 尚徳(植物生態研究領域)、津山 幾太郎・北尾 光俊(北海道支所)、山田 健(林業工学研究領域)、古家 直行(北海道支所、現林野庁)、宇都木 玄(研究ディレクター)、佐々木 尚三(KITARINラボ)
  • 掲載誌
    Forests、14、784、2023年4月 DOI:10.3390/f14040784(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 宇都木 玄
  • 研究担当者
    植物生態研究領域 原山 尚徳

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