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植物生育阻害アルミニウムを無毒化するタンニンの生合成経路を一部再現

掲載日:2023年11月27日

酸性土壌で植物の生育を阻害するアルミニウムを無毒化する加水分解性タンニン注1) について、その中間代謝産物注2) を草本モデル植物ベンサミアナタバコ注3) の葉で作らせることに成功しました。酸性土壌でも生育できる常緑高木ユーカリの根から発見された同タンニンは、有害なアルミニウムと結合して無害な状態にできることから(図1)、酸性土壌での植林や作物栽培への活用が期待されています。同タンニンの機能を活用するためには、どのような遺伝子によって生合成されるのかを明らかにする必要がありますが、同タンニンは、遺伝子の情報が整備されている研究用の草本植物では通常蓄積しないため、どのように作られるのかはほとんどわかっていませんでした。今回の成果は、その生合成経路を解明するための重要な手がかりになります。

研究グループは、これまでに明らかになっているユーカリの加水分解性タンニンの生合成酵素遺伝子をベンサミアナタバコで発現させました。その3日後、同タンニンの中間代謝産物であるβーグルコガリンが検出され、同タンニンを蓄積しない草本植物でも生合成経路の一部を再現できました(図2)。

注1) 加水分解性タンニン:植物に分布するポリフェノールの一種。皮なめしや防腐効果が古くから報告され活用されている。

注2) 中間代謝産物:最終産物にいきつく手前の中間段階の物質。

注3) ベンサミアナタバコ:煙草の原料となるタバコの仲間でナス科の植物。栽培が簡単で、植物学実験のモデル植物として利用されている。また、外来の有用タンパク質をたくさん作らせることが出来るので、COVID-19のワクチンなど医薬品の製造にも用いられている。

本研究は、Journal of Plant Researchにおいて2023年8月に公表されました。)

 

図1:加水分解性タンニンによるアルミニウム無毒化機構

図1:加水分解性タンニンによるアルミニウム無毒化機構

図2:加水分解性タンニン生合成経路
図2:加水分解性タンニン生合成経路

 

  • 論文名
    Heterologous gene expression system for the production of hydrolyzable tannin intermediates in herbaceous model plants(草本モデル植物を用いた加水分解性タンニン生合成機構の解明手法の確立)
  • 著者名(所属)
    小田(山溝)千尋(樹木分子遺伝研究領域)、光田 展隆(産業技術総合研究所)、Milkowski Carsten (マルティン・ルター大学 ハレ・ヴィッテンベル)、伊東 秀之(岡山県立大学)、江面 健太郎(産業技術総合研究所、JSPS)、田原 恒(樹木分子遺伝研究領域)
  • 掲載誌
    Journal of Plant Research、136、891-905 Springer社・日本植物学会、2023年8月 DOI:10.1007/s10265-023-01484-2(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 正木 隆
  • 研究担当者
    樹木分子遺伝研究領域 山溝 千尋

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