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南大東島定着のモズ、本土から繰り返し移住し多様な遺伝子維持

掲載日:2023年12月14日

本土から600km以上離れた沖縄の離島・南大東島のモズは、本土からの遠距離移住を繰り返すことにより多様な遺伝子(遺伝的多様性)を維持できたことで定着につながった可能性の高いことが遺伝子解析で分かりました。限られた数の個体しかたどり着けない離島における生物集団の定着・進化のプロセスは長く未解明でしたが、その一端を明らかにする成果です。

研究グループは、南大東島や小笠原諸島父島など過去50年の間にモズ(写真)が移住した4つの離島を含む9地域565個体の血液などからDNAを抽出して、遺伝子解析を行いました。その結果、南大東島への定着に成功したモズは、本土から600kmを超えた距離の移住を約30年の間に2回以上繰り返し、遺伝的多様性を維持していたことがわかりました(図)。

一方で、本土から約900km離れた父島には、一度しかモズが移住しなかったことから遺伝的多様性が低下し、20年あまりで絶滅したことがわかりました(図)。

複数回の移住が離島におけるモズの定着の成否を分けたことが解明され、離島での生物進化プロセスの知られざる一面を明らかにすることができました。

本研究は、Biological Journal of the Linnean Societyにおいて2023年9月にオンライン公開されました。)

図:父島と南大東島の集団定着の比較
図:南大東島では本土から複数回の移住によって高い遺伝的多様性が維持され、集団が定着しました。一方、父島には一回の移住のみだったため遺伝的多様性が低くなり、集団の定着に失敗しました。

写真:南大東島で捕獲されたモズのオス
写真:南大東島で捕獲されたモズのオス。

 

  • 論文名
    Population genetics of recent natural colonization by the bull-headed shrike (Lanius bucephalus; Aves) suggests the importance of recurrent immigration on remote islands(モズによる自然定着の集団遺伝学:離島への再移住の重要性)
  • 著者名(所属)
    青木 大輔(野生動物研究領域)、松井 晋(東海大学)、江指 万里(北海道大学)、西海 功(国立科学博物館)、永田 純子(野生動物研究領域)、髙木 昌興(北海道大学)
  • 掲載誌
    Biological Journal of the Linnean Society、2023年9月 DOI:10.1093/biolinnean/blad105(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 正木 隆
  • 研究担当者
    野生動物研究領域 青木 大輔

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