研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > 八丈島侵入アリ駆除の毒餌剤、アルゼンチンアリも寄りつく効果
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掲載日:2024年2月21日
八丈島の里山周辺で家屋害虫化している外来種アシジロヒラフシアリの駆除を目的に、森林総合研究所と東京都立大、八丈町が共同開発した毒餌剤「ハイドロジェルベイト剤」注1)が、現在、他の地域で問題となっている特定外来生物アルゼンチンアリ注2)にも寄りつき効果を示すことが分かりました(写真1)。この毒餌剤は安価で容易に作成でき、地面やアルゼンチンアリが採餌や越冬で利用する樹木に直接撒(ま)けることから、駆除への活用拡大が期待されます。
研究グループは、奈良県内のアルゼンチンアリ侵入地において、ハイドロジェルベイト剤とほかの餌等がアルゼンチンアリを寄りつかせる効果について、比較調査しました。その結果、外来アリの分布調査に広く用いられている小麦粉とえびを主成分とするスナック菓子には劣るものの、砂糖水や市販毒餌剤と同等以上に寄りつかせる効果を確認しました。
ハイドロジェルベイト剤は、遅効性の殺虫剤が入った砂糖水を高吸水性ポリマーに吸わせたゼリー状の毒餌剤(写真2)で、アリが巣に持ち帰って仲間に分け与えることにより巣全体で駆除します。海外において近年、外来アリ駆除で実績を上げており、日本では八丈島で初めて使用されました。
注1) 2022年6月プレスリリース「外来家屋害虫アシジロヒラフシアリに対するハイドロジェルベイト剤の新規開発と住民参加型防除プログラムの効果の評価について」
注2) アルゼンチンアリ…働きアリの体長約2.5ミリ。国内各地に侵入が確認されており、住宅などで食品に群がったり、電気製品に入り込んで不具合を起こしたりすることから大きな問題となっている。世界と日本それぞれで侵略的外来種ワースト100に選ばれている。
(本研究はApplied Entomology and Zoologyにおいて2024年2月にオンライン公開されました。)
写真1:調査用の皿に置いたハイドロジェルベイト剤に群がるアルゼンチンアリ
写真2:殺虫剤液剤と砂糖を水に溶かし高吸水性ポリマー(左下の粉末)に吸わせて作成した毒餌剤ハイドロジェルベイト剤。
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