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タイ熱帯季節林でリターフォールパターンと環境因子との相互関係を解明

掲載日:2024年2月27日

タイ熱帯季節林で森林からの葉・花・果実等の落下(リターフォール)を約30年にわたって観測したところ、果実のリターフォールは「ラニーニャ現象」発生の年に増加する傾向が確認されました。森林の更新に重要な種子生産に関係する果実のリターフォール、これと気候変動影響要因との相互関係を明らかにした本成果は今後の熱帯季節林の管理に役立ちます。

森林総研とタイ カセサート大学の研究チームはタイ西部のメクロン試験地(12ha)で森林動態や物質循環に関する様々な調査を1993年から継続しています。2021年までに観測されたリターフォールについて、気象データとの関連を解析した結果、果実のリターフォールは、光や平均温度、南方振動指数(SOI)※1 との関係が強く、東太平洋の海面水温が低くなるラニーニャ現象が発生して湿潤な環境となる年に増加する傾向が確認されました(図)。

このほか、葉のリターフォールは大気飽差※2 と蒸発散量がそれぞれ最も重要な気象要因であることが分かりました。

※1 南方振動指数(Southern Oscillation Index):南太平洋のタヒチとオーストラリアの都市ダーウィンとの気圧差を指数化したもので、貿易風の強さの目安となる。正(負)の値は貿易風が強い(弱い)ことを表し、一般的にはラニーニャ時に正の値、エルニーニョ時に負の値となる。

※2 大気飽差(たいきほうさ;Vapor Pressure Deficit):ある温度における飽和水蒸気圧と実際の蒸気圧との差。

本研究は、Forests誌において2023年10月に公開されました。)

写真:熱帯季節林のリタートラップ
写真:熱帯季節林のリタートラップ。
乾季には毎年山火事があり、焼失をふせぐため金属製のネットを使っている。

 

図:1993年から2021年の間の結果
図:1993年から2021年の間のSOI値とラニーニャ現象発生年(橙網掛け)、エルニーニョ現象発生年(薄緑網掛け)および果実リターフォールが多かった年(赤矢印)。
ほとんどのラニーニャ発生年で果実リターフォールが平年値より多くなる。

  • 論文名
    Long-term seasonal variability on litterfall in the tropical dry forests, western Thailand(タイ西部熱帯乾燥林におけるリター落下の長期季節変動)
  • 著者名(所属)
    Dokrak Marod(タイ カセサート大学)、中静 透(森林総合研究所 所長)、齋藤 智之(森林総合研究所 東北支所)、平井 敬三(森林総合研究所 研究ディレクタ―)、Sathid Thinkamphaeng・Wongsatorn Phumpuang・Sura Pattanakiat・Noppakun Danrad(タイ カセサート大学)
  • 掲載誌
    Forests、14(10)、2107、2023年10月 DOI:10.3390/f14102107(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 平井 敬三
  • 研究担当者
    東北支所 齋藤 智之

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