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掲載日:2024年4月9日
四万十川の森林流域(高知県)における長期間の水質モニタリングの観測から、生育期間(3月~10月)の日照時間が長い年ほど渓流水のカリウムイオンなどの溶存成分の濃度が増加する傾向が認められることを明らかにしました。
私たちは森林流域を起源とする水資源を利用しており、渓流水の良好な水質が維持されることが重要です。数十年前には酸性雨による森林の渓流水質への悪影響が懸念されていましたが、近年では顕在化しつつある気候変動による悪影響が懸念されています。これらの問題に対応するために長期間の渓流水のモニタリングが実施されてきました。四国支所の研究グループは四万十川流域の2地域(大正、梼原)において20年以上にわたり渓流水質を観測してきました(写真1)。毎年の渓流水質と気象条件などの影響を解析したところ、生育期間の日照時間が長い年ほど渓流水のカリウムイオン、カルシウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオン濃度などが増加する傾向を明らかにしました(図1)。日照時間が長いほど樹木による光合成活性が活発になり、土壌中の有機物分解や岩石の風化などの過程を通じて渓流水質にまで影響を及ぼすことが示唆されました。
これまで日照時間が渓流水質に及ぼす影響はほとんど考慮されてきませんでした。酸性雨や気候変動が渓流水質に及ぼす影響を評価する際に、日照を考慮することで予測精度が向上することが期待されます。
(本研究は、Ecological Researchにおいて2024年1月にオンライン公開されました。)
写真1:鷹取試験地(高知県梼原町)
図1:生育期間の日照時間と渓流水質のカリウムイオン濃度の関係
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