侵略的外来種が都市において引き起こす経済コスト

掲載日：2024年5月27日

侵略的外来種が世界の都市環境にもたらした経済コスト（損失額と対策費）を国際的なInvaCostデータベース（外部サイトへリンク）で試算したところ、61種が1965年～2021年の累計で3267億米ドル（2017年の為替レートで換算）の経済コストを発生させていました。外来種の侵入は生物多様性への影響だけでなく経済コストも引き起こす問題であることを認識する必要があります。

一方、試算対象となったデータは一部の国・地域や一部の種の報告に限られており、実際に生じている経済コストの全体像の把握はいまだ難しい現状も明らかになりました。世界中の経済コストを正確に把握するためには各国政府や自治体、研究者からの積極的な報告が求められます。

試算結果によると、経済コスト額の上位5種はイエシロアリ、アオナガタマムシ、ヒアリ、チチュウカイミバエ、カワラバト（ドバト）でした。うち建築物害虫であるイエシロアリは2521億米ドルに上り、61種の累計コスト全体の77％を占めていました。

InvaCostデータベースは、侵略的外来種の経済コスト評価が不十分との問題意識のもと、パリ・サクレ大学が主導する国際プロジェクト（外部サイトへリンク）により構築されました。森林総合研究所の研究員も参加し、日本語を含む22言語による報告資料を収集し経済コストを解析しています。

（本研究は、Science of the Total Environmentにおいて2024年3月に公開されました。）

表：都市における経済コストが報告された侵略的外来種上位10種

• 論文名
  Economic costs of invasive non-native species in urban areas: An underexplored financial drain（都市部における侵略的外来種の経済コスト：十分に調査されていない経済的負担）
• 著者名（所属）
  Gustavo Heringer（Nürtingen-Geislingen University、Universidade Federal de Lavras）、Romina D. Fernandez（Universidad Nacional de Tucumán）、Alok Bang （Society for Ecology Evolution and Development、Azim Premji University）、Marion Cordonnier （Univ. Regensburg）、Ana Novoa（Czech Academy of Sciences）、Bernd Lenzner（University of Vienna）、César Capinha（University of Lisbon、Associate Laboratory Terra）、David Renault（University of Rennes、Institut Universitaire de France）、David Roiz（Université Montpellier）、Desika Moodley（Czech Academy of Sciences）、Elena Tricarico（University of Florence）、Kathrin Holenstein（Univ. Montpellier）、Melina Kourantidou（University of Southern Denmark、Université de Bretagne Occidentale）、Natalia I. Kirichenko（Sukachev Institute of Forest Siberian Branch of Russian Academy of Sciences、Siberian Federal University、All-Russian Plant Quarantine Center）、José Ricardo Pires Adelino（Universidade Estadual de Londrina)、Romina D. Dimarco（University of Houston、IFAB (INTA-CONICET),）、Thomas W. Bodey（University of Aberdeen）、亘 悠哉（野生動物研究領域）、Franck Courchamp（Université Paris-Saclay）
• 掲載誌
  Science of the Total Environment, 917, 170336, 2024年3月 DOI：10.1016/j.scitotenv.2024.170336（外部サイトへリンク）
• 研究推進責任者
  研究ディレクター 正木 隆
• 研究担当者
  野生動物研究領域 亘 悠哉