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熱帯低地林で択伐後の地上部と細根の回復状況を明らかにした

掲載日:2024年7月19日

ボルネオ島北部の択伐*1) が行われた熱帯低地林を対象に、樹木の現存量*2) を推定したところ、択伐からの経過年数が長いほど過去の伐採履歴がない森林(原生林)に近い水準まで回復していることが明らかになりました。熱帯林の伐採からの回復過程の解明につながる知見です。

ボルネオ島の森林面積の約半分を占める木材生産林では、過去に行われた伐採の影響が残っており、地上部だけでなく地下部の根の回復が妨げられている可能性があります(写真)。そこで、伐採年が異なる2つの森林(択伐から6年と16年経過)と、原生林を対象に現存量を調査しました。

伐採時の作業の影響を択伐林の作業道と林内で比較した結果、同じ伐採年では作業道の方が林内よりも細根(直径2ミリ以下)の現存量が少なくなっていました。伐採で樹木が減ったことと重機による土壌の踏み固めが原因と考えられます。しかし、伐採年の古い択伐林の作業道と原生林との間で細根現存量に有意差はみられませんでした(図)。このことから、伐採年の新しい択伐林と比べて伐採年の古い択伐林の方が、より回復が進んでいることがうかがえました。

一方、林内の細根現存量は両択伐林とも原生林との有意差が確認されませんでした。また、地上部の現存量は古い択伐林が新しい択伐林より多く、年月とともに回復が進んで原生林の値に近づいていることが分かりました。

*1) 択伐:収穫のために、ある面積の森林をすべて伐採するのではなく、目的にあった樹種やサイズの樹木のみを選択して伐採すること。

*2) 現存量:面積当たりの生物体(ここでは樹木)の乾燥重量。今回は細根の現存量を1平方メートルあたりの乾燥重量(キログラム)で表した。森林地上部の場合、1ヘクタール(100メートル四方)あたりの乾燥重量(メガグラム=トン)で表されることが多い。

本研究は、Tropicsにおいて2024年5月に公開されました。)

写真:択伐から6年が経過した森林の作業道跡
写真:択伐から6年が経過した森林の作業道跡
伐採と重機による土壌の踏み固めの影響で表層土壌は固く、樹木の定着や成長が妨げられていると考えられます。

図:細根現存量の比較
図:細根現存量の比較(深さ15cm)
作業道の細根現存量は林内と比べて少ないものの、古い択伐林の作業道と原生林との間では有意差がみられませんでした。
※図は論文中の図を基に作成しました。

  • 論文名
    Logging impacts on above- and belowground forest biomass and production in Bornean lowland forests.(ボルネオ低地林における森林伐採が森林地上部および地下部の現存量と生産速度に及ぼす影響)
  • 著者名(所属)
    宮本 和樹(生物多様性・気候変動研究拠点)、相場 慎一郎(北海道大学)、青柳 亮太(京都大学)、Reuben Nilus(サバ州林業局森林研究センター)
  • 掲載誌
    TROPICS、33(1)、p. 9-26 2024年5月 DOI:10.3759/tropics.MS23-09(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 平井 敬三
  • 研究担当者
    生物多様性・気候変動研究拠点 宮本 和樹

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