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キイチゴの種間雑種と新たな雑種が遺伝子解析により明らかに

掲載日:2024年8月6日

外観など形態的な特徴から種間雑種(*1)と推定されていたキイチゴ属のゴショモミジイチゴ、ビロードゴショイチゴ、ゴショクサイチゴの3種類と未発表1種類(今回ビロードモミジイチゴと記載)の遺伝子を解析したところ、これら4種類は実際に種間雑種であることが証明されました。種間雑種を作りやすく、形態からは分類が難しいキイチゴ属の雑種特定や分類に遺伝子解析が役立つことを示しました。

研究グループは、これら4種について、核ゲノムに存在するITS領域(*2)と呼ばれるDNA領域を解読し、他の野生種の遺伝子配列と比較したところ、種間雑種であることを証明しました(図1)。新雑種ビロードモミジイチゴは、ビロードイチゴとモミジイチゴそれぞれの配列を併せたようなデータが得られ、これら2種を親種とする種間雑種の証拠となりました(図2)。

ラズベリーや野生のモミジイチゴなど甘酸っぱい果実でおなじみのキイチゴ属は野生種が世界で700種以上を数え、日本でも30種あまりが知られています。

(*1)種間雑種:植物ではしばしば、異なる2種が交配し子孫を残すことがあり、これらは「種間雑種」と呼ばれる。種間雑種はふつう、2種の親種の中間的な形態を示す。

(*2)ITS領域:「ITS」はInternal transcribed spacerの略。リボゾーム(細胞小器官の一種)をコードしている遺伝子の中に存在している。動植物含め多くの生物が共通して持つDNA領域であり、種の識別や系統解析によく用いられる。

本研究は、大阪市立自然史博物館研究報告2024年3月に公開されました。また、植物研究雑誌においては2024年10月に公開されます。)

図1:本研究で種間雑種であることが証明された4種のキイチゴ
図1:本研究で種間雑種であることが証明された4種のキイチゴ(ゴショクサイチゴ、ビロウドゴショイチゴ、ゴショモミジイチゴおよびビロウドモミジイチゴ)とその親種。


図2:遺伝子配列分析装置で検出された遺伝子配列データの例
図2:遺伝子配列分析装置で検出された、遺伝子配列データの例。推定雑種では、DNA配列の一部で、親種の配列を併せたような2種類の波形が検出された。

  • 論文名
    1) バラ科キイチゴ属の1新雑種:ビロウドモミジイチゴ
    2) バラ科キイチゴ属ゴショイチゴを親とする推定雑種の分子生物学的検証
  • 著者名(所属)
    1) 菊地 賢(北海道支所)、眞崎 久(山口県光市)、橋本 勝明(静岡県立島田高等学校)、鳴橋 直弘(大阪市立自然史博物館)
    2) 菊地 賢(北海道支所)、久米 修(香川県高松市)、眞崎 久(山口県光市)、渡辺 将人(熊本大学)、鳴橋 直弘(大阪市立自然史博物館)
  • 掲載誌
    1) 大阪市立自然史博物館研究報告、78巻27-38ページ、大阪市立自然史博物館、2024年3月31日発行
    2) 植物研究雑誌、99(5): 296-305、株式会社ツムラ、2024年10月
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 佐藤 保
  • 研究担当者
    北海道支所 菊地 賢

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