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亜高山帯針葉樹林12種の葉緑体DNA収集解析、保全への活用期待

掲載日:2025年1月9日

北海道から四国にかけて分布する亜高山帯針葉樹林を構成している針葉樹5種と被子植物7種の葉緑体DNAを収集解析し遺伝情報をまとめました。人為的な攪乱が比較的少ない亜高山帯針葉樹林でもシカ食害や温暖化の影響が顕在化しており、今回の成果は森林保全への活用が期待されます。

研究チームは、亜高山帯針葉樹林12種について、日本をはじめ韓国や中国北東部、ロシア極東部などから葉のサンプル計92点を収集し解析し、葉緑体DNAの遺伝情報をまとめました。これら遺伝情報は保全のための遺伝マーカー開発をはじめ、分類学的研究や種内の系統地理学的研究に有用です。生物から環境中に放出されたDNA(環境DNA)や、古代の生物から抽出されるDNA(古代DNA)を用いる研究にも応用できます。

今回とりまとめた遺伝情報を使って、地域間の塩基配列の違いを種ごとに調べたところ、それらの違いの多くは日本の限定された地域にみられましたが、韓国・中国・ロシアに由来する塩基配列もみられました(図2)。これらの遺伝情報は、日本の亜高山帯針葉樹林の起源を探るための重要な知見となります。

本研究は、Ecology and Evolutionにおいて2024年7月に公開されました。)

 

図1:シラビソが優占する亜高山帯針葉樹林
図1:シラビソが優占する亜高山帯針葉樹林(愛媛県石鎚山)。


図2:コケモモとトウヒの葉緑体DNA塩基配列の系統関係とサンプルの採集地点
図2:被子植物コケモモ(左)と針葉樹トウヒ(右)の葉緑体DNA塩基配列の系統関係とサンプルの採集地点。
系統樹で同定された葉緑体系統の分布を番号と色の付いた丸で示す。
系統樹の記号は塩基配列の登録名を示す。

  • 論文名
    Chloroplast genome-based genetic resources via genome skimming for the subalpine forests of Japan and adjacent regions(ゲノムスキミングによる日本の亜高山帯林と隣接地域の葉緑体ゲノムに基づく遺伝資源)
  • 著者名(所属)
    James R.P. Worth(樹木分子遺伝研究領域)、菊地 賢(北海道支所)、金谷 整一(九州支所)、高橋 大樹(東北大学)、逢沢 峰昭(宇都宮大学)、Elena A. Marchuk(ロシア科学アカデミー極東支部)、Hyeok Jae Choi(昌原大学)、Maria A. Polezhaeva(ロシア科学アカデミー・ウラル支部)、Viktor V. Sheiko(ロシア科学アカデミー極東支部)、上野 真義(樹木分子遺伝研究領域)
  • 掲載誌
    Ecology and Evolution 2024年7月 DOI:10.1002/ece3.11584(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 佐藤 保
  • 研究担当者
    樹木分子遺伝研究領域 James R.P. Worth

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