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掲載日:2025年3月3日
山岳の高標高域でみられる外来植物の種組成が全国的に似ていることが、北海道から九州までの山岳ロープウェイの始発地と終着地での植物調査により分かりました。生物多様性保全上の価値が高い山岳域で適切な外来種管理をすすめるうえで役立つ知見です。
研究チームは2022年から2023年にかけ、ロープウェイが設置されている全国14の山岳域を選んで、ロープウェイの始発地(低標高域)および終着地(高標高域)で植物の調査をおこないました。その結果、全ての山岳の高標高域に少なくとも1種(計35種)の外来植物種を確認しました。山岳間の種の入れ替わり*)の程度は、外来植物において在来植物より小さく、高標高域間で特に小さいことが分かりました。また、外来植物種の高標高域での存在確率は低標高域での存否と強く関係しており、種子供給源となる低標高域での外来種管理が重要であることが示唆されました。
外来種の侵入は生物多様性損失の主要因の1つであり、侵入先で生物群集の均質化**)を引き起こします。山岳域は一般的に外来種侵入のリスクが低い生態系ですが、山小屋などの山岳域に特有の建造物や登山などの人為活動が、非高山性の外来種の侵入を可能にすることが近年報告されています。山岳域の低標高域と高標高域を直接つなぐロープウェイは、外来植物の長距離かつ高い標高差の侵入経路として機能しうると考えられます。
*)種の入れ替わり:標高や緯度経度などの地理的距離に伴い出現する種が変化すること。この値が小さいと、出現する種が似ていることを示す。
**)生物群集の均質化:空間的に異なる場所の生物相が類似するようになるプロセス。
(本研究は、Global Ecology and Conservationにおいて2024年11月に公開されました。)
図:全ての山の組み合わせ間で種の入れ替わりの程度を解析(結果の一部を図示)
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