研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2025年紹介分 > 外来種ツヤハダゴマダラカミキリ、産卵時に同種の産卵痕避ける傾向
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掲載日:2025年10月17日
街路樹や果樹などさまざまな樹種に食害をもたらす特定外来生物ツヤハダゴマダラカミキリ(図a)は、同種別個体が残した「産卵痕*(図b)を避けて産卵する傾向があることが分かりました。今後この仕組みを解明できれば、人為的に産卵を抑制できる可能性があり、防除手法の開発に向けた新たな展開も期待されます。
昆虫にとって、親による産卵場所の選択は子の生存および成長の鍵となります。このとき、一部の昆虫では雌が同種の別個体の行動を参照して意思決定を行うことが知られており、産卵場所の分散や集中がみられます。昆虫の産卵に関わる個体間の相互作用を解明することは、生態学的に重要であるだけでなく、新規の害虫防除手法の開発にもつながります。
研究グループは実験室内で、ツヤハダゴマダラカミキリの雌成虫に同種別個体の産卵痕がある材とない材を提示し、どちらに産卵するのか検証しました。その結果、16個体のうち14個体が産卵痕のない材により多くの産卵痕を残し、産卵痕を回避する傾向があることが分かりました(図c)。
*)産卵痕:本種の雌成虫は、幼虫の餌となる樹木を選び、その樹皮に傷をつけて産卵する。その傷を産卵痕と呼ぶ。
(本研究は、Bulletin of Entomological Researchにおいて2025年5月に公開されました。)

図:(a) ツヤハダゴマダラカミキリの雌成虫。
(b) 樹皮につけられた産卵痕。
(c) 雌成虫に他個体の産卵痕がある材とない材を提示し、産卵場所を選択させる試験を行った結果。棒グラフは追加された産卵痕数の平均値および標準誤差を表す。黒丸プロットは実験に用いた各個体を表し、同一個体のデータは実線で結ばれている。アスタリスク(***)は2つの処理区間で統計学的に有意な差があったことを示す。
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