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更新日:2025年12月19日

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三宅島噴火で植生喪失後のつる植物、クローン繁殖で勢力回復

掲載日:2025年12月19日

火山噴火で巨大な撹乱を受けた三宅島の森林で、木本性つる植物のテイカカズラ(キョウチクトウ科)がどのように勢力を拡大するのか、その繁殖戦略を遺伝解析により解明しました。噴火による植生喪失から回復しつつある若い森林では、種子で定着したごく少数の個体が、自身の体の一部を伸ばして別の場所に定着して別個体のようにふるまう『クローン繁殖』を専ら行っていることを突き止めました。これは森林撹乱後につる植物が繁茂する重要な仕組みを明らかにしたものです。

災害後につる植物が繁茂することは知られていましたが、その仕組みはよく分かっていませんでした。これは、災害前から生き残った個体の影響を区別するのが難しかったためです。そこで本研究では、2000年の噴火で植生が喪失、リセットされた三宅島に着目しました。噴火後に合計300m2の調査区に新たに定着したテイカカズラ231本を対象にDNAを抽出し、11遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いてその繁殖戦略を評価しました。その結果、分析した231本のうち95%の219本は重複した遺伝子型を持ち、わずか10個体からのクローン繁殖に由来することがわかりました。本成果はつる植物のしたたかな生存戦略を解明したもので、将来の森林管理を考える上でも重要な知見となります。

(本研究は、American Journal of Botanyにおいて2025年8月に公開されました。)

つる植物が繁殖している森林内の写真

写真1:三宅島の噴火後22年経過した若い森林。つる植物テイカカズラは疎らに分布するが、これらは外から飛んできた種子が芽生えて、ごく一部の個体が急速にクローン繁殖で拡大したもの

  • 論文名
    Clonal reproduction as a driver of liana proliferation following large-scale disturbances in temperate forests(温帯林における大規模撹乱後のつる植物の繁茂を駆動するクローン繁殖)
  • 著者名(所属)
    森 英樹(樹木分子遺伝研究領域)、上條 隆志(筑波大学)
  • 掲載誌
    American Journal of Botany, 2025年8月,
    DOI:10.1002/ajb2.70085別ウィンドウで外部サイトへリンク
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 八木橋 勉
  • 研究担当者
    樹木分子遺伝研究領域 森 英樹

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