研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2026年紹介分 > 乾燥常緑林の蒸散量はエルニーニョによる極端な乾燥から素早く回復した
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掲載日:2026年2月20日
カンボジアの乾燥常緑林*)(写真)は2015~16年のエルニーニョの影響を受け、乾季に極端な少雨と異常乾燥に見舞われて蒸散量を激減させ、その後の雨季には素早く回復させていたことが分かりました。異常乾燥による熱帯域の樹木枯死の増加が報告される中、今後の乾燥常緑林の保全に役立つ成果です。
カンボジアには乾燥常緑林を含む天然林が分布しており、エルニーニョによる異常乾燥の影響が危惧されますが、その実態は不明なままでした。研究チームは7年間にもわたって乾燥常緑林の蒸散量を計測し、2015~2016年の異常乾燥による影響を検討しました。蒸散量は、幹に挿入したセンサーで樹液の移動量を計測して求めました。乾燥常緑林の環境を把握するために、日射や温湿度、地下水面深度の測定も行いました。
その結果、異常乾燥が生じると乾季が長くなり、乾燥常緑林の周囲は乾燥状態に陥り、地下水面は通常よりも3倍以上も深い深度170cmなりました(図)。そして、地下水面が深度80cmを下回ると地中の乾燥の影響を受けて蒸散量は減少することが明らかとなりました(図)。減少の程度は1~4割にも達する場合もあり、樹木は一時的に葉を落としました。しかし、雨季になると蒸散量は速やかに上昇したことから、樹木は新しい葉を素早く開いたものと考えられます。2015~2016年の異常乾燥はその前の10年間で最も厳しいものでしたが、気候変動によってこれを上回る乾燥が生じる可能性は否定できません。今後も計測を継続し、乾燥常緑林への影響を監視する取り組みが必要です。
*)明瞭な雨季と乾季がある地域に分布する常緑林を乾燥常緑林と呼びます
本研究は日本学術振興会の科学研究費補助金(課題番号21710021、19K06135、21H05316、22H02396)、環境省地球環境保全等試験研究費(公害防止)研究プロジェクト「メコン中・下流域の森林生態系スーパー観測サイト構築とネットワーク化」、環境省地球環境保全等試験研究費(農1942)、農林水産省委託プロジェクト「アジア地域熱帯林における森林変動の定量評価とシミュレーションモデルの開発」による助成を受けて実施されました。
(本研究は、Agricultural and Forest Meteorologyにおいて2026年1月に公開されました。)

写真 カンボジア国コンポントム州に位置する乾燥常緑林

図 2011~2017年の雨量、地下水面深度、蒸散量の長期変化傾向。旬平均値もしくは積算値を示しています。灰色の期間が雨季、それ以外は乾季です。エルニーニョの影響で2016年乾季は雨量が極端に少なく、地下水面深度が170cmまで下がり、蒸散量も減少しましたが、雨季になると速やかに回復しました。データはIida et al. (2026)に基づいています。
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