研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2026年紹介分 > 個性や働き方に応じたアプローチにより、安全マニュアルの遵守をいっそう促進できる
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掲載日:2026年2月26日
性格的に勤勉性や協調性が高い伐倒作業者ほど安全マニュアルに従い、そうでない作業者は安全マニュアルに従っていないことが全国アンケート調査の分析で分かりました。実効性の高い安全教育や合理的な安全管理体制を構築するには、重点ポイントの示し方、学習機会、声かけやフォローを作業者の性格に応じて設計する必要があることを示唆する成果です。
研究グループは2024年、全国の伐倒作業者1,034人にアンケート調査し、安全マニュアルへの対応(マニュアルが役立っていると思うか、読んでいるか、遵守しているか、など)とともに、経験年数、研修経験、給与形態、性格特性に関わる質問などを尋ねました。統計分析の結果、性格分類法ビッグ・ファイブ(注)の性格特性のうち勤勉性・協調性・神経症傾向が高い人ほど、マニュアルに従って作業する傾向があり、逆にこれらの性格特性が低い人ほど、遵守しない傾向がありました。都道府県主催の研修経験や給与形態(出来高・自営等)などもマニュアル遵守の程度に影響していました。
林業はチェーンソーや重機を扱う危険作業が多く、労災死傷者は他産業を大きく上回っています。労災低減は重要な課題ですが、本アンケートでも安全マニュアルを「全く見ていない」と答えた伐倒作業者が14.8%もいて、一般的なマニュアル周知だけでは、より安全な作業への行動変容を促しにくい作業者もいるのが現状です。今後は個々人の性格や働き方に応じて、重点ポイントの示し方、学習機会、声かけやフォローを設計することで、より実効性の高い安全教育と合理的な安全管理体制の構築につなげていくことが期待されます。
この研究は森林総合研究所運営費交付金プロジェクト「伐倒時の倒伏メカニズムに基づいた伐倒技能の評価手法の構築」の一部として実施しました。
(注)ビッグ・ファイブ(Big Five):人の性格を次の5つの基本特性で捉える心理学の代表的な枠組み。1)外向性:社交的で活動的か、内向的で静かに過ごす傾向か、2)協調性:思いやりがあり協力的か、競争的で批判的になりやすいか、3)勤勉性:計画的で責任感が強いか、ルーズで先延ばししやすいか、4)神経症傾向:不安や緊張を感じやすいか、感情が安定しているか、5)開放性:新しい経験や発想に前向きか、慣れたやり方を好むか。
(本研究は、環境情報科学学術研究論文集において2025年12月に公開されました。)

写真 林業現場の風景。林業の千人当たり年間労災死傷者数(2023年)は22.8人で、他産業(運輸6.9人、建設4.4人、製造2.7人など)を大きく上回る。その減少のための取り組みが続けられている(写真は本文と関係ありません)

図 性格特性や経験など、どの規定因がマニュアル参照・遵守行動に影響するのかが明らかになった(上の図)。また、安全マニュアルを「役立つ」と感じることや、ヒヤリハット等の情報共有、事故を起こさない自信、他人の指摘の受け止め方が、作業者の性格特性や研修経験・経験年数とどのように結びつくかを示した(下の図)。+は行動や評価を高める方向、−はそれらを低める方向への関連を表す。例えば、勤勉性の高い性格特性の人や経験年数が長い人ほど事故を起こさない自信があり、神経症的傾向の高い性格特性の人は事故を起こさない自信がない、という関連性を表している。
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