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スギの生物ストレス応答遺伝子は日本海側と太平洋側で働き方が異なる

掲載日:2026年3月27日

葉の形など多くの性質が異なる日本海側のスギ(ウラスギ)、太平洋側のスギ(オモテスギ)は生物ストレス応答*)に関わる遺伝子の働き方にも違いがあることを明らかにしました。これは、地域ごとに異なる病原菌や害虫に対応してきた結果と考えられ、スギの地域適応の仕組みを遺伝子のレベルで理解する上で重要な知見です。

国内に広く分布するスギは、地域によって違う環境(気象や生物相)に適応してきたと考えられます。地域適応によるスギの違いを調べるために、全国の天然林(産地)から集めたスギの挿し木苗を宮城県・茨城県・熊本県の3ヶ所にほぼ共通したセットで植栽して産地試験地が作られています。適応に関わる遺伝子を明らかにするため、これら3つの試験地でウラスギ8系統、オモテスギ3系統、屋久島のヤクスギ1系統について、それぞれ2本ずつを選び解析対象としました(図1)。高温による環境ストレスが大きいと考えられる真夏日の日中に、これらのスギの針葉を採取して遺伝子発現量**)を調べ、働いている遺伝子の種類と量を比較しました。

その結果、3試験地に共通して、オモテスギやヤクスギでは病害への抵抗性に関わる遺伝子の発現量がウラスギより多く、よく働いていることが分かりました(図2左)。一方、ウラスギでは生物ストレス応答で重要なテルペノイド生合成***)に関わる遺伝子が、オモテスギやヤクスギより多く働く傾向がありました(図2右)。

本研究は、環境研究総合推進費(JPMEERF20S11808)および科学研究費助成事業(JP24H00527)の支援を受けて実施されました。

 

*)生物ストレス応答 病原菌や昆虫からの食害など、他の生物からの攻撃に対して植物が身を守るために起こす反応のことをいいます。

**)遺伝子発現量 ゲノムDNA中の各遺伝子から作られるRNAの量を表し、量が多いほどその遺伝子がよく働いているという目安になります。

***)テルペノイド生合成 植物が受ける様々なストレスに対応する物質テルペノイドを植物体内で作るしくみのことです。

(本研究は、PLOS Oneにおいて2025年9月に公開されました。)

北海道と沖縄を除く日本地図にスギ天然林がある地名と試験地名を記した
図1. 研究材料の産地であるスギ天然林(●)および試験地(◆)の位置。12系統から2本ずつを選び、合計24本について3試験地のそれぞれで解析しました

オモテスギ、ウラスギ、ヤクスギについて、病害抵抗性遺伝子とテルペノイド生合成遺伝子の発現量を比較した図
図2. 産地によるスギの遺伝子発現の違い
横軸は各個体の遺伝的な違いを示し、縦軸は遺伝子発現量を示します。遺伝的な違いと相関する遺伝子発現の違いが見られます

  • 論文名
    Transcriptome differentiation in Cryptomeria japonica trees with different origins growing in the north and south of Japan
  • 著者名(所属)
    伊原徳子、内山憲太郎(樹木分子遺伝研究領域)、金谷整一(九州支所)、陶山佳久(東北大学)、津村義彦(筑波大学)
  • 掲載誌
    PLOS One 20(9): e0320549, September 2025
    DOI:10.1371/journal.pone.0320549(外部サイトへリンク) 外部サイトへリンク
 
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 八木橋 勉
  • 研究担当者
    樹木分子遺伝研究領域 伊原 徳子

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