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ブナ科の常緑広葉樹はその年の光合成で作った炭素でどんぐりを生産

掲載日:2026年3月30日

ブナ科の常緑広葉樹であるアラカシとマテバシイでは、体内に貯蔵した炭素量の季節変化は気候に左右されやすいこと、どんぐりの成長には貯蔵した炭素よりも光合成で新しく作られた炭素が主に使われていることが明らかになりました。この成果は、気候変動に対するどんぐり生産の予測モデルの開発につながる発見です。

樹木は、光合成で作った炭素(炭水化物)を使って成長や繁殖(実や種をつけること)をしますが、炭水化物が必要な時に光合成ができない場合に備えて、体内に炭水化物を貯蔵する仕組みを進化させてきました。しかし、大きな成木が、繁殖のためにどのように炭水化物を貯蔵したり使ったりしているのかは、まだよくわかっていません。そこで、どんぐりをつけるブナ科の常緑広葉樹のうち、春に花が咲いてその年の秋にどんぐりが成熟するアラカシと、春に花が咲いて翌年の秋にどんぐりが成熟するマテバシイを対象に、2年間にわたって葉・枝・ドングリについて、貯蔵された炭水化物の量(デンプンと可溶性糖類*)の濃度)、炭素の安定同位体比、重さ(バイオマス)を測定しました。

樹木が成長する春から秋にかけて、アラカシとマテバシイともに、枝には貯蔵した炭水化物(デンプン)は見られませんでしたが、葉には一定量のデンプンが見られました。冬には、葉のデンプン濃度は低下しましたが、そのぶん可溶性糖類の濃度が増加して炭水化物の総量は変化しませんでした。冬に葉で可溶性糖類の濃度が増加したのは、低温に備えて細胞の耐凍性を高めるためと考えられます。翌春には、糖が減るのと同時にデンプンが増える現象が見られました。これらの結果から、貯蔵した炭水化物の量とその組成(デンプンか可溶性糖類か)の季節的な変化は、繁殖よりも気候の変化に強く影響されていると考えられます。さらに、炭素の安定同位体比の結果からも、どんぐりが1年で成熟するアラカシでも2年で成熟するマテバシイでも、貯蔵された炭水化物ではなく、光合成で新しく作られた炭素がどんぐりの生産に主に使われていることがわかりました。

*)水に溶ける分子量の小さいグルコースやショ糖など糖類で、エネルギー源の供給、貯蔵、そして様々な代謝プロセスを調節する役割を担っています。

(本研究は、Tree Physiologyにおいて2024年12月に公開されました。)

マテバシイの枝に葉と実が付いている写真

マテバシイ:春に開花し、翌年の
秋にどんぐりが成熟する

アラカシの枝に葉と実が付いている写真

アラカシ:春に開花し、その秋に
どんぐりが成熟する

写真:どんぐりの成長パターン

論文名
Carbon use strategies in shoot and acorn growth of two evergreen broadleaf trees unraveled by seasonal carbohydrate measurements and carbon isotope analysis
(炭水化物の季節変化と炭素同位体分析から常緑広葉樹におけるシュート成長及びドングリ生産の炭素利用戦略の解読)

  • 著者名(所属)
    韓慶民・壁谷大介(植物生態研究領域)、稲垣善之(四国支所)、川崎達郎(当時:植物生態研究領域)、佐竹暁子(九州大学)
  • 掲載誌
    Tree Physiology, 44(13), 221-231, December 2024, DOI: 10.1093/treephys/tpad072
    DOI:10.1093/treephys/tpad072(外部サイトへリンク) 外部サイトへリンク
 
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 八木橋 勉
  • 研究担当者
    植物生態研究領域 韓 慶民

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