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森林吸収源対策のロジック整理と改善提案

掲載日:2026年3月31日

2050年カーボンニュートラルの達成に向け、日本の森林吸収源対策について、政策文書の横断的レビューとロジックモデル(図1)を用いて記述のつながりや整合性を体系的に整理しました。その過程で、森林吸収源対策の成果と「指向する森林の状態*」との関係が読み取りにくい箇所や、将来の担い手・財政など状況変化を織り込みにくい目標設定といった改善の余地が観察されました。これらの分析結果を踏まえ、政策の整合性や改善点を可視化し、地方自治体の施策設計にも活用できる知見を提示しています。

この研究では、森林・林業基本計画や地球温暖化対策計画など複数の政策文書を対象に、それぞれが示す施策・目標・成果指標のつながりや位置づけを比較し、公開資料から読み取れるロジックの整合性を検討しました。特に、伐採木材製品**の炭素貯蔵効果については、「国産材供給量」というマクロ的目標ではなく、用途別木材利用量(とりわけ建築用材)の目標値を測定指標とすることで、森林吸収量目標への貢献を検証できる新たなロジックの構築を提案しました。また、「指向する森林の状態」については、育成複層林の範囲や構成に数値規定を設け、炭素吸収量確保との論理的接続を強化する枠組みを提示しています。

さらに、地方自治体レベルでの森林整備計画における施策設計を支援するため、地域文脈を踏まえて活用できるタイプ2のロジックモデル(図2:地域の状況に応じた施策設計に必要な要素を整理するための論理的枠組み)の活用を提案しています。これにより、現場での計画策定や政策評価の精度向上が期待されます***。

 

注記

*)指向する森林の状態 森林・林業基本計画で掲げられた長期目標で、天然生林の保全や育成複層林の割合増加などを通じて、生態系保全や公益的機能の発揮を目指す森林の望ましい構造を示す。

**)伐採木材製品(Harvested Wood Products:HWP) 伐採後に製材や合板などの木材製品として利用される木材を指し、製品の使用期間中に炭素を貯蔵する効果がある。国連気候変動枠組条約のパリ協定では、森林吸収源対策の一部として位置づけられている。

***)本研究は公開資料に基づく記述整理を目的としており、個別自治体の運用実態の評価は行っていません。

 

(本研究は、森林総合研究所研究報告において2025年9月に公開されました。)

施策、目標、成果の順に配置

図1:ロジックモデルの概念図

タイプを4つに分ける

図2:ロジックモデルの類型
Mills et al. (2019) (Creative Commons Attribution 4.0 International License http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/) を参考に筆者作成

 

論文名
日本の森林吸収源対策のロジックの整理—ネットゼロエミッションの達成に必要な森林吸収源の評価に向けて—

  • 著者名(所属)
    江原 誠(生物多様性・気候変動研究拠点)、古川 拓哉(生物多様性・気候変動研究拠点)、藤間 剛(企画部)、平田 晶子(生物多様性・気候変動研究拠点)、酒井 寿夫(立地環境研究領域)、北原 文章(森林管理研究領域)、森井 拓哉(林業経営・政策研究領域)、石塚 成宏(企画部)、柳田 高志(木材加工・特性研究領域)、橋本 昌司(立地環境研究領域)、津山 幾太郎(北海道支所)、久保山 裕史(東北支所)、松井 哲哉(森林植生研究領域、筑波大学 生命環境系)、小南 裕志(森林防災研究領域)
  • 掲載誌
    森林総合研究所研究報告、24巻3号、177-192、森林総合研究所、2025年9月
    DOI:10.20756/ffpri.24.3_177 (外部サイトへリンク)外部サイトへリンク
 
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 齋藤 英樹
  • 研究担当者
    生物多様性・気候変動研究拠点 江原 誠

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