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小笠原諸島の希少低木種ウラジロコムラサキ、自然交配だけでは多様性維持が困難

掲載日:2026年4月23日

小笠原諸島の父島と兄島にのみ分布する希少種の常緑低木ウラジロコムラサキ(写真)のうち、父島の集団は自然交配による遺伝的多様性の維持が難しいことが、遺伝解析により明らかになりました。父島のオス個体と兄島のメス個体との人工交配によって遺伝的多様性が高まる可能性も確認され、今後の保全戦略に役立つ成果です。

研究チームが父島のウラジロコムラサキを対象に遺伝解析を行ったところ、2024年時点で父島に現存する成木は、オスが12個体でメスはわずか3個体でした。さらに、父島で自然交配によって得られた実生17個体のうち約4割が近縁種オオバシマムラサキとの交雑(雑種)個体であることが分かりました。純系実生の花粉親は1個体に偏っていたことから、自然交配だけでは次世代の遺伝的多様性を維持することが難しい状況が明らかになりました。そこで、父島のウラジロコムラサキのオス個体と兄島から選抜したメス個体との人工交配(遺伝的救済*)を想定した模擬実験(シミュレーション)を行ったところ、次世代の遺伝的多様性が高まることが確認されました(図)。

食害をもたらしている外来種のノヤギやネズミ類の駆除に加え、今後は継続的な人工交配を進めることで、ウラジロコムラサキの持続的な保全と自立的な集団の再生が期待されます。

本研究は日本学術振興会の科学研究費補助金(課題番号21K05694、24K01801)による助成を受けて実施されました。

)遺伝的救済 遺伝的多様性が低下した集団に、別の集団の個体を交配させて多様性を回復させる方法。

 

(本研究は、保全生態学研究において2026年3月に公開されました。)

蕾がついているウラジロコムラサキ

写真:小笠原諸島の希少植物ウラジロコムラサキ。岩場や乾燥した低木林に生育し、葉は分厚くたくさんの毛が密生しています。本土のムラサキシキブとは異なり雌雄異株です。野生化したヤギによる食害によって個体数が激減し、現在は種の保存法に基づいて「国内希少野生動植物種」に指定され保全が進められています。

 

遺伝的多様性のシミュレーション結果のグラフ

図:父島のウラジロコムラサキにおける次世代の遺伝的多様性のシミュレーション結果。
横軸は交配に参加するオス個体数、縦軸は得られた次世代の遺伝的多様性を示しています。交配に参加するメス個体数は、異なる色のシンボルで表しています。父島の個体のみを用いた場合(左)、次世代の遺伝的多様性は現在の水準に達しませんが、兄島のメス個体を交配に加えることで、次世代の遺伝的多様性が現在より高くなることが示されています(右)。

論文名
小笠原諸島における絶滅危惧種ウラジロコムラサキの遺伝的多様性と保全に向けた提言

 
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 八木橋 勉
  • 研究担当者
    樹木分子遺伝研究領域 鈴木 節子

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