研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2026年紹介分 > 不定胚形成による再生スギ・ヒノキ、野外での成長を初めて報告
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掲載日:2026年7月1日
不定胚形成*(以下、SE)により再生したスギ・ヒノキを試験地に植栽し成長を調査したところ、初期成長および材の強度は概ね正常範囲であることが分かりました。SEにより再生した国内造林樹種では初めての成長報告で、無花粉スギなどの苗木の大量増産につながる成果です。
研究グループは、2006年に森林総合研究所の試験地「千代田苗畑」(茨城県)に植栽されたSE由来のスギとヒノキの植栽直後の成長を調査するとともに、植栽から16年後の成長データを収集し解析しました。調査できた本数は限られているものの、SE苗と従来の実生由来の苗とで初期の樹高成長に違いは検出されませんでした。2022年時点で、SE苗の平均胸高直径はスギ約12cm、ヒノキ約10cm、平均樹高はいずれも10mを超え、実生由来苗と同等でした。また、苗木の枝葉が茂るにつれて光を遮られて枯れた以外に顕著な問題は観察されず、木材強度の評価指標である「立木応力波伝搬速度」も概ね正常範囲内でした。
SEによる苗木生産は、これまで国内造林樹種には使われていなかった新しい苗木生産技術です。本研究成果を第一歩として、今後もSE苗の成長特性や木材特性の調査を進めていきます。
*)不定胚形成(somatic embryogenesis、SE)
培養容器内で植物ホルモンなどを調整することで、特定の働きや形を持つ細胞にまだ分化していないスギやヒノキの細胞の塊(カルス)を培養し、そこから不定胚と呼ばれる、種子の胚に相当する器官を誘導します。不定胚は種子と同様に発芽し、植物体へと再生します。カルスを大量に増殖させることで、苗木を大規模に生産することが可能になります。将来的に、SEに由来する苗を安心して利用していくためには、実際にSE苗を山林に試験植栽し、問題なく成長するかを明らかにすることが不可欠です。
(本研究は、Journal of Forest Researchにおいて2026年1月に公開されました。)

写真1:不定胚形成に由来するスギ(a,c)とヒノキ(b,d)の植物体の再生
カルスから誘導された不定胚(a,b)が発芽することで、植物体(c,d)が再生できます。

写真2:森林総合研究所千代田苗畑に植えられた不定胚形成に由来するスギ
現在のスギの様子(左)と、系統ごとの胸高直径の比較(右、Tsuruta et al. 2026のFigure 5aをもとに作図)。
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