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更新日:2026年7月6日

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スズメバチ女王を不妊化する線虫、世界最大級のオオスズメバチを含む国内各地の在来5種に寄生

掲載日:2026年7月6日

スズメバチタマセンチュウ(写真1A、B)は、越冬中のスズメバチの女王(写真1C)に感染して不妊化する寄生線虫です。15年間の調査で、この線虫は国内に広く分布することや、世界最大級のスズメバチであるオオスズメバチを含む5種の日本産スズメバチに寄生し、それらの女王による営巣を減らす要因として働いていることが分かりました。

2005〜2019年に、北海道から九州まで国内9地点で誘引トラップを使ってスズメバチ各種の女王を約3,000頭捕獲し、この線虫の寄生状況を調べた結果、コガタスズメバチ以外の在来5種、すなわちケブカスズメバチ*)、オオスズメバチ、チャイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、モンスズメバチに寄生することが分かりました。また、気候に関係なく各地で確認されたことから、宿主のハチが存在する地域なら潜在的に分布可能と考えられました。

一方で、この線虫の寄生は、各調査地点で最も多く捕獲されたスズメバチの種に集中し、札幌市ではケブカスズメバチ女王の60.7%、熊本市ではオオスズメバチ女王の18.1%に寄生していることを確認しました(図1)。10年連続で調査した札幌市と熊本市では、この線虫の寄生がほぼ毎年確認され、宿主のハチも毎年捕獲されたことから、この線虫は女王を不妊化させるものの、ハチの個体数を激減させるほどではないと考えられました。しかし、この線虫は、スズメバチ女王を不妊化することにより営巣数を制限する重要な要因(天敵)として常に働いているといえます。

*)本種はキイロスズメバチと呼ばれることもある。

 

本研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業(課題番号20380097、21K05693)による助成を受けて実施されました。

(本研究は、Insectes Sociaux, Springer Natureにおいて2026年3月に公開されました。)


左写真はオオスズメバチの女王腹部に薄黄色したスズメバチタマセンチュウが寄生している様子。真ん中の写真は15㎜ほどのサイズで薄黄色したつぶつぶな表面のスズメバチタマセンチュウ雌成虫の様子。右写真は朽木の中で越冬しているオオスズメバチ女王の様子。
写真1:スズメバチタマセンチュウとオオスズメバチ。A:スズメバチ女王腹部に寄生するスズメバチタマセンチュウ(矢印、ぶつぶつに見えるもの)。B:取り出したスズメバチタマセンチュウ雌成虫。体表には多数のいぼ状突起がある。C:朽木の中で越冬中のオオスズメバチ女王。

 

左図はスズメバチが採取された札幌市と熊本市が日本地図で表記されている。右図は各種スズメバチの割合が表示されている。
図1:札幌市と熊本市で採れた各種スズメバチの割合(円グラフ)とスズメバチタマセンチュウの寄生率(括弧内)。

 

  • 論文名
    Ecology of Sphaerularia vespae, a nematode parasite that sterilizes hornets (Vespidae: Vespa): host range, geographical distribution and prevalence of parasitism(スズメバチを不妊化する寄生線虫スズメバチタマセンチュウの生態:宿主範囲、地理的分布、寄生率)
  • 著者名(所属)
    小坂肇(きのこ・森林微生物研究領域)、佐山勝彦(九州支所)、神崎菜摘(関西支所)、高畑義啓(北海道支所)、牧野俊一(森林昆虫研究領域)
  • 掲載誌
    Insectes Sociaux, Springer Nature, March 2026,
    DOI:10.1007/s00040-026-01087-9(外部サイトへリンク)別ウィンドウで外部サイトへリンク
 
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 前原 紀敏
  • 研究担当者
    きのこ・森林微生物研究領域 小坂肇

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