研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2026年紹介分 > 盛土に植えられたクロマツの倒れにくさには直根が重要な役割を果たす
更新日:2026年8月4日
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掲載日:2026年8月4日
東日本大震災後に造成された盛土に再生されたクロマツ海岸林では、地表近くで横へ広がる根(水平根)よりも、地中深くに伸びる根(直根)のほうが木を倒れにくくするうえで重要な役割を果たすことが分かりました。これは、強風や高潮、津波に対して倒れにくい海岸林を整備するためには、根が支障なく地中深くまで伸びられる土壌の厚さを十分に確保することによって、直根の発達を促すことが重要であることを示す結果です。
震災後の海岸林再生事業では、地下水などの影響によって植栽した木が根腐れを起こすなど、根の発達が制限されることのないよう、「盛土」によって十分に厚い土壌層を確保した生育基盤が整備されました。しかし、重機を使った生育基盤の整備では、重機踏圧により土壌が締め固められてしまう場合も多く、そのような土壌環境では植栽木の直根成長が抑制されたという報告も散見されました。そこで、多くの海岸林が成立してきた従来の海岸砂丘地とは異なる土壌特性を有する、この「盛土」に植えられたクロマツについて、直根・水平根の発達と倒れにくさとの関係を明らかにするため、研究グループは宮城県の海岸の盛土に植栽された10~13年生のクロマツ14個体を対象にクロマツの根の発達状況と倒れにくさに関する調査を行いました。クロマツの倒れにくさは、調査対象の樹木の幹に取り付けたロープをウィンチで牽引して樹木を引き倒すことで、倒れに対する抵抗性を評価することができる「引き倒し試験」によって測定しました。
実際の津波による被害では、地下水位が高い砂地に生育して直根の伸長深度の浅い個体が流出した事例が多数発生しました。今回の調査では盛土に植えられたクロマツでも直根の体積割合は水平根に比べて小さい傾向にあったことが分かりました(図1)。またクロマツの倒れにくさへの根の寄与は、水平根に比べて盛土中に伸びた直根の方が高いことも今回の調査から明らかとなりました(図2)。
このことは、直根体積が多少小さくとも、直根が盛土に伸びることで木を倒れにくくするうえでの効果を期待できることを表していると言えます。研究グループによるこれまでの調査では、盛土に植えられた全てのクロマツで直根の伸長深度が浅い訳では無く、植栽して10年後に根の深さが100㎝を超える個体も複数観察されています。これらの結果から、海岸林の生育基盤造成の狙いであった「直根が地中深く発達できる土の層の確保」は多少ばらつきがあるものの、ある程度達成されていると言えます。
(本研究は、Forest Ecology and Managementにおいて2026年4月に公開されました。)


図1:盛土に植栽されたクロマツの根の写真(a)と模式図(b)
模式図(b)は露出させた全ての根(a)の直径、長さおよび座標を計測して根系構造を再現した。青色は水平根、緑色は直根を表す。
盛土に植えられたクロマツ(樹齢13年生)は水平根に対する直根の割合が小さい様子が確認された。

図2:直根体積VTRと水平根体積VHRの合計値を一定(0.01 m3)としてそれぞれを変化させた場合の倒れにくさMCTの推定値の変化
倒れにくさMCTと水平根体積(VHR)、直根体積(VTR)のそれぞれの測定値から得た回帰式( MCT = 456VHR + 883VTR + 0.4, R2 = 0.90, p < 0.001 )により求めた。
水平根と直根体積の合計値が一定の場合には、直根の体積割合が大きくなると倒れにくさは大きくなる。
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