今月の自然探訪
更新日:2026年6月1日
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はじめに
皆さんは、冬虫夏草という言葉を聞いたことがありますか。その昔中国で、昆虫から生えたきのこが見つかりました。当時の人たちは冬には虫で夏にはきのこ(草)になると考え、きのこと虫の合わさった状態を冬虫夏草と名付けたとされています。現在分類学上はシネンシストウチュウカソウという、きのこの一種のみを指しますが、日本では昆虫から生えたきのこの総称として冬虫夏草類という表現が使われています。冬虫夏草類は、特に夏に多く、地面、倒木、葉の裏、枝の上など、虫の種類に応じていろいろな場所で見つかります。今回は、皆さんの身の回りの公園や緑地で見つかる2種類の冬虫夏草類を紹介します。
クモタケを見つけよう
最も身近な冬虫夏草類がクモタケです。梅雨の時期に発生し、長さが2–3 cmくらいの薄紫色の粉をまとったガマの穂のような形のきのこです(写真1)。クモタケは地面から生えた状態で見つかりますが、実は地下には竪穴があり、クモタケの根元は、竪穴式の巣の中でこのきのこに殺されたクモ(キシノウエトタテグモ)とつながっています(写真2)。この宿主となったクモは人里近くに生息しています。ちなみに、クモタケが初めて見つかった場所は都内にある東京大学付属の小石川植物園でした。ですから、皆さんも公園や緑地の植え込みの根元、とりわけ落ち葉がなく、地面が裸になった地表を丹念に探して下さい。関東ならば7月1日の前後1週間を集中的に探してみましょう。見つけたら写真に撮って、クモが作った地下の巣の中から、地面にある巣の「蓋」を押し上げて外に伸びている、クモタケの特徴をしっかりと記録してください(写真3)。ものさしも忘れずに。
ツクツクボウシタケを見つけよう
もし、クモタケが見つからなかったときは、同じ公園でツクツクボウシタケを探してみましょう。こちらも公園や緑地で見つかります。クモタケとは異なり、白い粉を付けたマッチ棒のようなきのこです(写真4)。8月下旬から9月にかけて、親になる直前の蝉の幼虫から発生し、高さは2cmほどです。その名の通り、ほとんどの場合ツクツクボウシの幼虫から発生します。数本まとまって見つかる時には、地面に石灰を撒いたように見えることがあります。掘り出してみると、蝉の幼虫は自分の巣穴の地面ぎりぎりの場所で死んでいます(写真5)。あと少しで成虫になれたのに、蝉にとっては災難です。でもツクツクボウシタケは、いつ幼虫に感染して、幼虫が成虫になる時期をどのように知るのでしょうか。なぞは尽きません。写真を撮るときには、どこまで土に埋まっていたかが分かるようにすると良いでしょう(写真5)。
冬虫夏草類の探索には安全に十分気をつけ、採集については許可が必要な場所がありますので事前に確認してください。それでは幸運を祈ります。
(森林昆虫研究領域 佐藤 大樹)
写真1 クモタケ
根元が白く先端に向かい紫色で粉状の胞子をつくっている。
(2019年7月6日多摩森林科学園)

写真2 掘り出したクモタケ
袋状のクモの巣(矢印)を切り開くと白い菌糸に覆われた
クモ(円内)が現れる。(2019年7月6日多摩森林科学園)

写真3 トタテグモの巣の蓋(円内)を押し上げて発生
しているクモタケ(2024年6月29日多摩森林科学園)

写真4 ツクツクボウシタケ
地面から白い粉をまとったマッチ棒のようなきのこが
生えている。(2024年10月3日多摩森林科学園)

写真5 堀り採ったときの様子に合わせて
置きなおしたツクツクボウシタケ
宿主(矢印)は地面すれすれのところにいる
(2024年10月3日多摩森林科学園)
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