今月の自然探訪
更新日:2026年5月1日
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春先から初夏になると毎年のように「ササの花」に関する話題が報じられます。その際、「数十年から百数十年に一度だけ花を咲かせる」という感じの文が枕詞として付いていることが多いのですが、そのこととササの花が毎年ニュースになることは矛盾しているように感じられます。
ササはイネ科の植物であることから、花もイネと良く似た形をしています。ササの一種であるスズタケの場合には、濃い紫色をした穂から垂れ下がる黄色のおしべとその付け根あたりに綿毛のような白色のめしべを観察することができます(写真1)。
しかし、ササの花はイネの花と同じく地味で目立たないためか、咲いていても気付かれないことが多いようです。
ササの咲き方を大まかに分けると、広域で開花する一斉開花と小規模で開花する部分開花の二つに区分されます。このうち部分開花は、小規模なため気付かれないことが多いのですが、ササの種類を問わず、かなりの頻度で生じていると考えられています。ササの花に関するニュースが毎年のように報じられることを考慮すると、毎年日本のどこかで何らかのササの部分開花が生じているとも言えそうです。
一方、「数十年から百数十年に一度だけ」生じ、珍しい現象とされるのが一斉開花です。近年では、2017年に中部地方でスズタケ、2022~2023年に北海道でクマイザサが一斉開花し、どちらも何度かニュースなどに取り上げられるほどの大規模なものでした。
このように、ササの一斉開花が生じる間隔は人の一生を越えるほど長いと良く言われますが、ササの種類、地域ごとに一斉開花が生じる年がずれているため、日本全体で見るとササの一斉開花はそれなりの頻度で生じているのです。
一斉開花と部分開花を比べると、一斉開花は広い範囲で生じるだけでなく、花の数が多く、花が付いている稈(茎)の密度が高いことが知られています。こうしたことから、ササが一斉開花した森林の林床には、たくさんの花が散りばめられた印象的な風景が広がります(写真2)。
また、スズタケの一斉開花では、地下茎から直接生じた花も多く認められます(写真3)。生きている間は地下茎の伸長によって分布を拡大していたササは、一斉開花した後、夏に実が結実して枯れてしまいます。このため、秋以降は緑の林内に枯れたササが林床に広がる少し異様な風景になります(写真4)。そして、林床に落ちた種子から発芽した幼いササが育ち、一斉開花前の状態に戻るにはかなりの時間がかかることが知られています。
これから、ササの花が咲く時期になります。森に出かけた時にササを見かけたら注意深く観察してみてください。たくさんの花が付いていたら、なかなか遭遇することのできないササの一斉開花かもしれませんよ。
(立地環境研究領域 岡本 透)
写真1. スズタケの花(2017年5月撮影 兵庫県)

写真2. スズタケが一斉開花した林床(2023年5月撮影 三重県)

写真3. 地下茎由来の当年生のスズタケ(矢印)と花(円内)(2017年9月撮影 長野県)

写真4. スズタケが一斉開花した翌年の林床(2018年5月撮影 三重県)
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