今月の自然探訪
更新日:2026年2月2日
ここから本文です。
ブナやミズナラなどのブナ科樹木の堅果(いわゆるドングリ)は、実りの良い豊作の年と、ほとんど結実しない凶作の年があることが昔から知られていました。これはマスティング(種子の豊凶)と呼ばれる現象で、数年に一度おとずれる豊作年には、同じ種類の樹木が同調してたくさんのドングリを実らせます(写真1)。
森林総合研究所では、東北地方の北上山地で1980年から40年以上にわたってミズナラの結実状況を観測してきました(写真2、3)。これまでの観測データをまとめたところ、近年になるほど結実数が増え、豊凶の周期も2000年代はじめ頃を境にして、それまでの3~4年周期から2年周期へと短くなっていることが明らかになりました(注1)。現在も2年周期のパターンが続いています。
このような中長期的な結実数の増加や豊凶周期の短縮化は、開花期や着葉期の気温上昇の傾向(約40年間で0.8℃増)とよく対応していることから、気温上昇による受粉成功率の向上や堅果生産に使えるエネルギー量の増加が関係していると考えられます。
ドングリはネズミやクマ、イノシシといった森の動物の重要な餌資源であり、マスティングは、クマの人里への出没や樹木更新にも影響を与えることが知られています。ドングリのマスティングが変化することで、動物の個体数や出没パターン、樹木更新のあり様も変わる可能性があります。しかし、実際にどのように変わっていくのか、まだ詳しくはわかっていません。樹木の繁殖と動物の生態にかかる長期的な基盤データを蓄積して、こうした関係性を検証していくことが重要です。
(注1)ドングリの結実周期はこの40年で短くなった
https://www.ffpri.go.jp/research/saizensen/2020/20200313-02.html
(森林植生研究領域 柴田銃江)
写真1. 林床のブナ堅果
豊作年では大量の堅果が結実し、林床に落下する。

写真2. ミズナラの堅果

写真3. 北上山地にある中居村ミズナラ試験地(岩手県岩泉町)
ミズナラの結実状況を知るため、毎年、種子トラップ(白い漏斗状のネット)に落下した堅果を計数している。
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.