今月の自然探訪

更新日:2026年4月1日

ここから本文です。

今月の自然探訪

山火事の特徴と消火の難しさ

 令和7年の岩手県大船渡市で発生した大規模な山火事(林野火災)を初めとして各地で林野火災が発生しており大きな問題となっています。それを受けて令和8年1月から全国の自治体では火災予防条例に基づく林野火災の注意報や警報の運用が始まりました。

 林野火災は単に森林の地表や立木が燃えるだけでは無く、森林が持つ土砂災害防止や水源涵養などの公益的な機能の低下につながり、社会に及ぼす影響は小さくありません。そのため林野火災の特徴を知り効果的な被害軽減の方法を考えることが必要です。

 ものが燃えるのに必要な条件は、燃焼物の存在、酸素の供給、発火する温度の3つになります。森林には樹木の他、地表には草や落枝・落葉など、燃焼し易いもの(可燃物)が多く存在します。これらが林野火災となって燃え拡がるには、森林内にたまった可燃物の量と水分状態、酸素の供給に影響する強い風、炎が上に拡がりやすくなる急な斜面などの条件にも影響を受けます。特に水分状態に関しては日本では雨が多く、枝葉が繁茂した森林の地表の可燃物は湿潤な状態を保ち易いですが、雨が少ない期間が長く続くと可燃物の乾燥が進み、火元が存在した時に着火しやすくなります。

 林野火災には、地表付近の草や落ち葉などが燃える「地表火」(写真1)と、枝葉を含めた樹木全体が激しく燃える「樹冠火」などの状態があります。大船渡市で発生した林野火災ではほとんどが「地表火」で燃え拡がり、「樹冠火」に至ったのはごく一部であったことが知られています。

 「樹冠火」では特に炎の勢いが強く周囲にも飛び火するため、近づいて消火することは難しくなります。ヘリコプター等で上空から消火活動が行われることもありますが、「地表火」では燃えている箇所が樹木の影に隠れてしまいますし、火災による上昇気流や樹木の枝葉の影響で消火剤を効果的に地表に届かせることは簡単ではありません。またこれ以外にも山中は人の立入りが少なく火災の発見が遅れがちになること、空気が乾燥した日や風の強い日、急な斜面では火の燃え拡がる速度が早いこと、出火場所までの道路が無い上に消火に必要な水源からの距離が遠いことなどの特徴もあります。このように林野火災が一旦拡がると消火は簡単ではありません。

 日本で主な林野火災の出火原因はたき火や火入れなどの地表付近で行う人的要因です。このため、乾燥した日や風の強い日には、特に火の取り扱いに気をつけて林野火災を起こさないようにすることが必要です。

(研究ディレクター 浅野志穂)

 

森林の地表で火が燃えている様子 

写真1. 地表火の例(石川県提供)

過去の自然探訪掲載一覧はこちら

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科 

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

Email:kouho@ffpri.go.jp