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秋の鳴く虫といえば夜を連想する人が多いかと思いますが,実は昼間も多くの虫たちが鳴いています。
ここ多摩森林科学園は丘陵地形ということもあって,よく知られた平地や草原の鳴く虫たちとは種類が異なります。サクラ保存林などの開けた林床(写真1)では,ヒメコオロギやヒゲシロスズが鳴いています。低くリーと聞こえるのがヒメコオロギ(4.4kHz)で,高くチリチリチリと聞こえるのがヒゲシロスズ(7.6kHz)です。どちらも単調な連続音なので聞き分けは難しいかも知れません。
一方,鬱蒼とした林縁部の潅木上(写真2)ではクサヒバリが,その下草部の地面(写真2)ではモリオカメコオロギが鳴いています。その名の通りヒバリのようにフィリリリリリと高く聞こえるのがクサヒバリ(5.7kHz)で,低くリーリーリーと聞こえるのがモリオカメコオロギ(4.5kHz)です。
これら4種ともすべてコオロギの仲間です。もちろん,鳴くのはオス。鳴いて同種のメスを呼んでいます。お互いの種内交信が干渉し合わないよう,それぞれの場所で周波数や地上からの高さによって音空間を住み分けているのです。(や)
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