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カンタン(10月)

カンタン「鳴く虫の女王」と呼ばれるほど昔から人気のある虫であるが,江戸末期の虫譜という昆虫図鑑に「邯鄲(かんたん)ぎす」として現れたのが最初であるらしい。

万葉のころから詩歌に詠われてきたコオロギやキリギリスと比べ日本での歴史は思いの外新しい。この「邯鄲」という漢字は,人生の栄枯盛衰の儚さを説いた「邯鄲の枕」あるいは「邯鄲の夢」として知られる中国の有名な故事から取られたようだ。その河北省邯鄲市にカンタンはいないらしいが,中国ではこの虫を「天蛉」と呼ぶ。体長14-18mm,翡翠細工のように透き通った淡緑色の美麗種である。クズなどの大きな葉の切れ目から顔を出して鳴くことにより音を増幅する。3パルスからなるチャープの連続音で,基本周波数は3kHz前後と他の鳴く虫に比べ低音で,ルルルルルと聞こえるその声に悲哀を感じる人は少なくない。この夢の様に儚い鳴き様から「邯鄲ぎす」の名を冠したものと考えられている。(や)

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