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5月の連休前の夕方サクラ保存林を歩いていると、枯れたススキの株の中からジィーという連続音が聞こえてきました。
この時期の夕刻から晩に、このような鳴き方をするのはクビキリギスかシブイロカヤキリです。どちらもキリギリスの仲間で成虫で越冬しますが、関東地方では4月下旬ごろから活動を始め、気温20度くらいの暖かく無風の晩に鳴き始めます。前者のほうが澄んだ声ですが、なかなか聞き分けが難しく、しばしば同所的のため声だけでは特定しかねます。採集も試みましたが逃げられました。
そこで今回録音した音声と既存の両種の音声データをPCで分析し比較したところ、パワースペクトル(周波数分布)などからシブイロカヤキリではないかと推測されました。クビキリギスのピーク周波数が14kHz周辺であるのに対し、シブイロカヤキリとこの不明種のそれは何れも10kHzと14kHz付近にピークがあったのです。ちなみにシブイロカヤキリの鳴き声が濁って聞こえるのは、このように周波数の山が複数あるからだと考えられます。(や)
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