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5月になって、園内のサクラ林の斜面や第2樹木園などで、モンシロチョウよりも大きな白い蝶をよく見かけるようになりました。半透明な翅に、薄黒い翅脈をもつこの蝶はウスバシロチョウです。‘シロチョウ’という名がついていますが、分類学的には原始的なアゲハチョウの仲間です。そのためウスバアゲハという和名を使う人もいます。
アゲハとしては珍しく卵で越冬し、幼虫はムラサキケマンなどの草を食べ、5月頃に成虫になります。繭を作るというのも蝶としては珍しい行動です。ミヤマセセリと同様に、1年に1回しか成虫が発生しませんが、新緑が出そろってから発生するので「春の使者」というには、ちょっと遅いかもしれません。
属名のParnassiusは、ギリシャ神話のアポロが住む山に由来し、この属には高山蝶や北方系の種が多く含まれます。日本の同属にはヒメウスバシロチョウや高山蝶のウスバキチョウがありますが、本州にはウスバシロチョウだけが分布しています。(し)Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.