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5月の始め頃に咲いていたフタリシズカを覚えていますか。茎の上部から2本の花穂を伸ばして白くて丸いつぶつぶ(雄しべの花糸)が並んだ姿は印象的でした(左写真、5月中旬撮影)。フタリシズカの名前は花穂が2本ということから付けられていますが、実際には花穂が1本や3,4,5本などの場合も多く見られます。
白い雄しべの花糸の内側にあった雌しべが受粉して発達した果実が6月頃には丸くふくらんできましたが、ずっと緑色なのでいつ頃熟しているのかよくわかりません(中写真、6月中旬撮影)。7月が終わろうとしている今の時期も果実は付いていますが、よく見ると茎の下部の節からまた別のものが出ています(右写真、7月下旬撮影)。これは閉鎖花です。
閉鎖花では自家受粉により種子が作られます。閉鎖花は種子を確実に付ける方法としては優れていますが、他の個体と花粉のやりとり(遺伝子のやりとり)ができないので、そればかりだと遺伝的変異の種類が限られ、長い目でみたとき自然選択に不利と考えられます。閉鎖花と開放花(ふつうの花)の長所短所を生かしながら、次世代を作っているのでしょう。
閉鎖花と開放花をつけるものは、他にスミレの仲間やセンボンヤリ、キッコウハグマ、ホトケノザ、ミヤマカタバミなど知られています。(よ)
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