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新築された森林微生物生理実験棟
昭和63年に、現行の研究基本計画が樹てられて5年が経った。平成5年度は、計画の見直しの年である。研究成果の反省とともに、新経済5ヵ年計画・科学技術政策大綱・林政審答申・研究レビューなど、外からの要請とのすり合わせにも注意を払った。その意味で、ここでは、1年の報告を”まえがき”するのではなく、基本計画前半の総まとめを踏まえた、新しい計画への想いを伝えることにしたい。
まず、2つあった研究問題は”先進開発地域の森林機能特性の解明とその総合的利用手法の確立”の1つにまとめられた。もちろん、関西支所に関するゾーンには、いろいろな開発ステージの地域が含まれているが、一言で特徴づけるとすれば、やはり先進開発地域ということになるだろう。
5つあった大課題は、3課題に整理された。森林に関する課題と林業を扱う課題、そしてこれらを総合化する課題という仕組みである。
すなわち、
(1)風致林・都市近郊林を中心とする森林の機能解明
(2)多様な保続的林業経営と施業技術の体系化
(3)森林機能の総合化手法と地域森林資源管理手法の確立
の3課題が掲げられている。
検討経過で問題になったのは、(3)の総合化の課題である。いまのところ、こういった課題の立て方をしても、実際に対応できる実行課題は少ない。総合化の研究は、必要が痛感されながら、具体的なアプローチ方法に迷っていた分野である。基本計画には、できる課題を掲げるのか、やらなければならない課題を示すのか、基本計画の立て方の理念に係わる問題である。
我々は、後者の考え方を採った。その糧となったのは、プロジェクト研究”緑資源の総合評価による最適配置手法の確立に関する研究”である。このプロジェクトは、現基本計画に芯を与えたものとして評価していいと思われるが、この成果によって、総合化に一つのステップが示されたといえる。
問題はこれからである。理想を実現するために、人なり経費なり研究資源の配置が必要である。研究運営にあたるものが、大きな責任を背負う形になった。各位のご指導、ご支援を、心からお願いしたい。
平成6年9月
森林総合研究所関西支所長林寛
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第35号(平成5年度)(PDF:8,229KB)
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