会場での質疑応答
2025年12月18日に開催した成果報告会における会場質疑を整理して掲載します。
1.民有林管理を取り巻く問題と研究の概要
Q (発表資料の公開予定)本成果報告会で使用したプレゼンテーション資料を今後公開する予定はあるか?
A ない。今後公開する本日の報告の動画、手引書および説明資料を参照されたい。
Q (風害を選定した理由)森林災害としては豪雨災害も重要である中で、本研究で風害を対象に選んだ理由は何か?
A 本研究は最終的に間伐を中心とした施業の在り方を検討することを目的としている。間伐が森林に影響を及ぼす災害要因の一つとして、風害が特に関係すると考え、研究対象として選定した。
Q (現場経験に基づく間伐と風害の関係)過去の台風被害の実体験から、間伐が行き届いていた森林の方が風害を受けやすかった事例を踏まえ、今後どのように森林整備を進めるべきか?
A 研究成果としても、間伐を行わず放置した森林は長期的に弱くなる一方、間伐後しばらくの期間は風を受けやすくなり脆弱になることが確認されている。間伐の有無のいずれにもリスクがあり、どのようにバランスを取るべきかについて現時点では明確な結論には至っていない。
2.間伐が遅れている森林を発見する
Q (間伐後の森林が解析結果に与える影響)間伐直後から数年後までの異なる状態の森林がレーザー計測データに混在することで、解析結果にどのような影響が生じるのか、事前に予測可能か?
A 樹冠閉鎖が進んでいた森林に間伐を実施すると、樹冠被覆率(CC)は低下するが、樹冠長率(CR)は低いまま残る。この両指標を組み合わせることで、間伐直後の森林である可能性を捉えることは理論上可能である。ただし、数年後の変化の把握は、モデル化や定期的な再計測を行わなければ難しい。
Q (ワイブル分布の推定と一般性)実測データがない場合にワイブル分布の推定が可能か?また今回の結果から一般的に適用可能な閾値が得られたか?
A 本研究では実測データを重視して確率密度を推定したが、枝下高の測定自体にばらつきがあり、誤差要因を完全に特定することは困難であった。地域ごとに最適値が異なる結果が得られており、実測データがない場合は、複数地域の結果の中間値を用いることが代替的手法として考えられる。
Q (市町村でのCC・CR算出方法)既に航空レーザー計測を実施している市町村が、CCやCRを算出したい場合の実施体制や利用可能なツールを知りたい。
A 本手法は特別に高度な処理を必要とするものではないため、航測会社が市町村向けに納品する成果物の一部として組み込むことが望ましい。専用のGISアプリケーションとして提供する予定はないが、個別の相談には対応する。
3.崩壊と風害の危険性の高い森林を発見する
Q (風害リスク評価の活用目的)風向きや局所的な風の通り道といった予測困難な要因がある中で、本研究成果をどのような用途で活用することを想定しているのか?
A 本成果は個々の台風の挙動を予測するためのものではなく、森林の状態を総合的に評価するための判断材料として用いることを想定している。まず広域的な評価を行い、その上で局所的な条件を加味するという段階的な活用が適切である。
Q (土層深推定の精度)土壌貫入計を用いずに土層深を推定した場合の誤差や適合率はどうか?
A 点的な観測では測定位置のわずかな違いによって値が大きく変動するため、単純な精度評価は難しい。一方、高密度のデータを用い平均的な傾向を評価することで、一定程度の精度は確保されていると考えられる。
4.施業方法を選択する指針
Q (災害リスクを考慮した優先順位付けの指標)森林経営管理制度の見直しにあたり、災害リスクの高い森林を優先的に選定するための簡便な指標があるか?
A 山地災害リスクについては、既存の山地災害リスクマップを用いることで一定の判断が可能である。一方、風害リスクについては、地域差を明確に示せるデータは現時点では十分でなく、今後の課題として検討する必要がある。
質問票の質問への回答
Q (育成単層林の適正な面積)森林・林業基本計画では、将来の森林の姿として育成単層林を約660万haと想定している。しかし、経済的にも防災的にも、実際に林業が継続できる森林はそれより少ないと感じる。この数字を研究の立場からどのように考えるか。
A ご指摘の通り、育成単層林の面積を現在よりも減少させる目標がある。しかし、過剰な育成単層林が放置されながら面積はほとんど減少していない。森林環境譲与税と森林経営管理制度が現場での森林の整理を後押しし、林業に適した立地では林業を再興させる一方で、継続が困難な森林の育成複層林化を推し進めて、我が国全体で将来適切な面積割合に誘導していく一つのきっかけとなることを望む。
Q (報告会の発表資料)本報告会の発表資料を公開するか。
A 本研究プロジェクト成果をWebページで公開し、その中に手引書PDF版を掲載した。また、本報告会の研究報告の動画を森林総研チャンネルで公開した。これらを参照されたい。
Q (土層厚マップの表示)土層厚マップをQGISなどの背景図として表示するのにはどうすれば良いか。
A 厚さそのものではないが、「土壌の厚さ指数」を弊所のwebページ「森林デジタル土壌マップ」から参照できる。
A 関連サイト:森林デジタル土壌マップ
A QGIS用タイルURL:https://www2.ffpri.go.jp/soilmap/tile/sp/ST75/{z}/{x}/{y}.png
Q (意向調査の前のデータ解析)森林経営管理制度では意向調査から始まるフローが示されているが、制度を適切に運用するためには、①航空レーザ計測による地形・森林資源データの整備、②それらのデータの解析、③災害リスクや管理状況を踏まえた森林の抽出、④意向調査を実施する森林・地域の絞り込み等の工程が意向調査の前提として必須と考えるべきか。また、③および④は誰が担うことを想定しているのか。
A 意向調査前の各種データ整備や解析は制度上の必須要件ではないが、私たちは推奨する。意向調査の前に客観的データを用いて森林を整理することで、重点的に対応すべき地域が見え、順序付けをする理由も説明しやすくなると考える。
A また、③の段階では、市町村の方針や現場感覚を反映させることが必要である。そのため、市町村に加え、②までを担ったコンサルタントや、現場に精通した林業事業体などが関与することが望ましい。④については、市町村が担うことが基本だが、必要に応じて林業事業体等が関与する余地もある。
Q (市町村職員のスキルや知識)航測会社やコンサルから提供される解析成果があっても、行政側が読み解けなければ十分に活用できない。今後、市町村の林務職員にはGISの活用能力や森林状態・地形判読などの知識が必須になるのか。また、行政職員に特に重要となるスキルや知識は何か。
A 市町村の林務職員に専門的な指標解釈や高度な林業判断能力までを一律に求めるのは現実的ではないと考える。一方で、行政全体のDX・省力化の流れの中で、GISについては基礎的な活用能力は今後重要性が高まると予想される。職員には「成果品を見て意味を理解し、説明を受けて判断に使える」最低限の素養から、研修と実務を通じて段階的に身につけていくことが現実的だと考える。
A 参考:森林GISフォーラム資料1 / 森林GISフォーラム資料2
Q (収益性の予想)管理優先度を示して、施業指針の選択肢も提案すると現場では採算性の問題になると思われる。目標林型に応じた収益性予想もある程度提案することは可能か?
A 本研究の主な対象となる森林は、収益性が期待できず市町村経営管理が必要となる林分であり、これらの林分における施業方法の選択による収益性予測の提示は本研究の対象外となることをご了解願う。ただし、人工林における林業収益の改善に繋がる適切な施業の提示は重要な課題であり、検討を続けていきたい。
Q (管理優先度を公表する懸念)管理優先度を市町村で公表していく上で懸念事項はあるか?
A (常陸太田市)0次谷は斜面崩壊リスクが比較的高い区域であることから、そのイメージが先行してしまい、「0次谷=危険区域」という誤った認識となる可能性がある。一方で、事前に0次谷が把握できれば作業道を避けることが可能であるなど、森林整備を行う事業者にとっては有用な情報なので、十分な説明とあわせて公開する必要があると思う。
A (久留米市)管理優先度の公表には、効率的な整備や防災対策、政策立案への活用といった意義がある一方で、慎重な対応も必要。特に「危険な森林」との印象が地域不安や風評につながること、優先度が資産価値の低さと誤解されること、さらには不適切な業者の介入を招く可能性については懸念がある。また、優先度が低い森林が「放置」と受け取られないよう、趣旨や判断基準を丁寧に説明し、地域の理解を得ながら運用することが重要と考える。
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