研究成果の概要

本ページでは、森林管理に関わる意思決定や実務を支えるために開発した技術・知見を、 技術的な観点から整理して紹介します。

経営管理が行われていない人工林を抽出する

樹冠疎密度(CC)と平均樹冠長率(CR)の合成による人工林管理状態の例
図:樹冠疎密度(CC)と平均樹冠長率(CR)の合成による人工林管理状態の例

人工林では、間伐等により適切な混み合い度を維持することが重要です。 手入れが行われないと林内は過密となり、混み合い度の高い人工林は 経営管理が十分に行われていない恐れがあります。 本研究では、航空機レーザ計測(ALS)データを用いて、 管内全域の人工林の混み合い度を広域的・面的に評価する手法を構築しました。

混み合い度の指標のうち、ALSで偏りなく推定できる 「樹冠疎密度」と「平均樹冠長率」に着目しました。 樹冠疎密度は林内の暗さ、平均樹冠長率は枝の枯れ上がりの程度を表す指標であり、 いずれも森林の手入れ状況を反映します。 他の混み合い度指標ではALS推定時に偏りが生じやすいことが明らかとなっており、 本研究では安定的に推定可能な2指標に基づく評価体系を確立しました。

対象地域を20mメッシュに区切り、各メッシュ内のレーザパルスを集計して 樹冠疎密度および平均樹冠長率の画像地図を作成します。 さらにGIS上で林小班界等と重ね合わせ、 閾値を設定することで手入れ不足の恐れのある人工林を抽出できます。 閾値は地域の状況や行政ニーズに応じて柔軟に設定可能です。

主な研究成果

詳しくは: 手引書 概要編 第3章

斜面崩壊危険度を判定する

山腹崩壊危険度分布図
図:山腹崩壊危険度分布図

斜面崩壊の危険度は、雨量、地質、地形、林況など多数の要素を総合的に評価して判定する必要があります。 本研究では、「山地災害危険地区調査要領」に基づく評価項目を整理し、 既存の地理情報を組み合わせることで、市町村管内全域に対して危険度を自動算出できる手法を構築しました。

新たな特長は、多数の評価要素をGIS上で自動的に処理し、 危険度を面的に俯瞰できるようにしたことです。 山腹崩壊危険度分布図では、危険度が最大となる齢級条件を仮定した評価を行い、 地形・地質・林況などの情報を統合して地域全体の危険度を可視化します。 また、数値標高モデルから0次谷地形を自動抽出する技術を開発し、 従来は肉眼判読に頼っていた危険箇所の把握を広域的・網羅的に可能にしました。 さらに、全国土層深分布図を整備・公開することで、 危険度判定に必要な入力情報を体系的に整えています。

主な研究成果

詳しくは: 手引書 概要編 第4章

風害リスクを評価する

林分密度管理図上での風害限界速度
図:林分密度管理図上での風害限界速度

我が国は台風の常襲地域であり、強風による森林の風害がたびたび発生しています。 本研究では、林相の違いによる強風への耐性を定量的に評価するため、 スギ・ヒノキ人工林のミニチュア模型を用いた風洞実験を行い、 根返りまたは幹折れが発生する限界風速を推定しました。

その結果、林分密度と耐風性の関係が明確になりました。 林木の成長に伴い限界風速は上昇しますが、過密状態では限界風速が低下し、 風害に対して脆弱になることが確認されました。 また、間伐直後には風荷重が増大し、一時的に風害リスクが上昇することも明らかになりました。 これにより、林分構造・密度・施業履歴と風害リスクとの関係を、力学的に説明できる枠組みが整理されました。

主な研究成果

詳しくは: 手引書 概要編 第5章

施業効果を予測し、適切な施業を選択する

間伐による樹冠長の変化に影響を与える要因
図:間伐による樹冠長の変化に影響を与える要因

混み合った人工林に対しては、間伐を行うのか、あるいは皆伐・再造林によって更新するのかを選択する必要があります。

本研究では、間伐後の樹冠長の回復に着目し、既存の観測データを統計解析することで、 林齢・収量比数・地域などの要因が間伐効果に強く関係することを明らかにしました。 これにより、間伐後の成長回復の可能性を事前に見積もることが可能となり、 施業選択を構造的に検討できる枠組みを提示しました。

主な研究成果

関連する施業技術の選択肢

詳しくは: 手引書 概要編 第6章


関連ページ:トップ制度と研究成果関係者の役割分担と連携研究成果の概要

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初期公開:2026/3/17 / 最終更新:2026/3/17